• ゲスト発言

第221回J.I.フォーラム 紛争、テロ、難民、その本質を考える。 そして、私たち、日本、がするべきこと。出来ることを考える。  2016/02/29(月)開催
ゲスト
アブディン モハメド オマル Mohamed Omer Abdin(東京外国語大学 特任助教、スーダン出身)

瀬谷ルミ子(NPO法人日本紛争予防センター 理事長)

ナジーブ・エルカシュ(ジャーナリスト、シリア出身)

コーディネーター : 加藤 秀樹(構想日本代表)

【議事概要】第221回「J.I.フォーラム」2016.02.29

 「紛争、テロ、難民、その本質を考える。そして、私たち、日本、がするべきこと。できることを考える。」 

於:日本財団ビル


<ゲスト>

アブディン モハメド オマル東京外国語大学 特任助教 スーダン出身

瀬谷ルミ子(認定NPO法人日本紛争予防センター(JCCP) 理事長)

ナジーブ・エルカシュジャーナリスト、シリア出身

 

<コーディネーター>

加藤秀樹(構想日本 代表)

 

<概要>

221J.I.フォーラム「紛争、テロ、難民、その本質を考える。そして、私たち、日本、がするべきこと。できることを考える。」では、東京外国語大学特任助教アブディン モハメド オマル氏、認定NPO法人日本紛争予防センター理事長の瀬谷ルミ子氏ジャーナリストナジーブ・エルカシュ氏の3名をゲストに迎えた。

 

加藤「第221回目です。今日は構想日本と渥美財団の共催です。」

「こういった問題に対して私たちが、日本が、何ができるのか。中にはこういう問題に関心をもち、詳しい方もいらっしゃるかと思いますが、私を含め多くの日本人は知らない、ちょっと他人事という感じではないかと思います。今日は、それがどういう状況か、また問題の国際的な背景をお話しして頂ければと思います。

 

瀬谷氏「戦後70年ということは、少なくとも日本は70年平和だった。その間世界の中ではもちろん紛争のなかった国や、ずっと長く紛争の続いている地域もあります。」


「日本紛争予防センターというNPOの理事長の瀬谷と申します。私からはまず簡単に、世界で今、何が起きているかということをお話しさせて頂ければと思います。」

「みなさん「紛争」といって具体的なイメージをもてる方も、もてない方もいらっしゃるかと思います。そんな中で、特に昨年は平和と紛争について考える1年だったんじゃないかと思います。まず年明けの1月、日本人二名が武装勢力イスラム国に拉致、殺害されるということがありました。それから昨年は戦後70年ということで、安倍首相が70年談話を出した節目の一年でもありました。あとは、安保法案。日本でも議論が白熱していました。そして年末の1112月にはパリの同時多発テロがあり、あれによって私たち日本人ももっと紛争ということを自分たちに引き寄せて考えなくてはならないと感じられたかと思います。」

VTR

「この70年間に、世界ではおよそ500の武力紛争が起き、分かっているだけで約1500万人が亡くなりました。42,500人これは何の数字でしょう。これは、2014年に新たに紛争などにより住む場を失くした人の数です。一日あたりの。1年間では1,390万人に及びます。4秒間に1人、逃げ惑い、また逃げる途中で命を落としている人がいるんです。昨年、シリアから逃れる途中で船が転覆し亡くなったシリア人の男の子について報道されましたが、そういうことが実際起こっているということです。報道されるのはごく一部です。」

2014年末までしか正確なデータがないのですが、紛争により6,000万人が住む場所を失っています。これは2014年新たに、住む場所を失ったというものです。この6,000万人という数字は、世界24位の国、イタリアの人口に相当します。それだけの人々が逃げ惑うしかなく、まともな社会生活も人生も送れずにいるという状態です。それに対して今は国際社会からの何らかの支援がなければその人たちの命も繋げないという状態が続いています。ただ私たちがよく耳にする難民というキーワードがありますが、この難民にあたるのが6,000万人のうち2,000万人だけになります。その他の多くは、国内避難民と呼ばれる人々であり、あとは難民申請者という内訳になります。難民というのは国外に脱出した人のことを言い、多くの場合は国内で誰にも助けてもらえない、国外からのネットワークもない状態の人なので、多くは国外へ行くこともできずにいます。」

 

加藤「この6,000万人っていうのは、単に家を失くした人というわけではなく、命の危険に晒されている人?」

 

瀬谷氏「そうです。6,000万人っていうのは、身の危険、生命の危険の他に、政治的に迫害されて自分の国の外に逃げざるを得ない、または自分の家に居住できないという人たちです。多くは、内戦、争いによる。」

「世界で難民といわれている人たちの半分が子どもです。武力紛争の犠牲者の多くは女性と子どもなんです。物理的力が無いので逃げるしかない、犠牲になりやすいです。現在の難民はシリア出身の方が多いです。数年前まではアフガニスタン難民が圧倒的に多かったのですが。どうして難民の方たちが逃げなくてはならないのか、これはもう明らかなことなんですが、現地にいることでは生き続けられない、そこにいては生きるか死ぬかも選べないような状態にあるから。」

(ピューリッツァー賞の写真)

「誤爆と呼んでいいのか分からないほど精度の低い空爆による被害には子どもももちろん含まれている。難民キャンプへ行っても十分な食糧が手に入らず、生きていくのが精一杯という環境にいる。その中で、特に親は、少しでも子供に良い環境、教育をと考え、少しでも生存確率の高い土地を求めて世界を彷徨うという状況が続いています。私からの概要は以上になります。」

 

加藤「瀬谷さんからは概要を説明して頂きました。ナジーブさんからは、今紛争地ではこんなことが起こっている、といった話を伺えればと思います。」

 

ナジーブ氏「私はシリアの問題はISISの問題ではないと分析しています。根本的な問題はそれではない。ISISはその結果だったと何度も説明しているのに。」

「私は、今日のこのフォーラムの基本的なことについて考えてみたいと思います。こちらは、中東専門のフォーラムではないということで、一般的な方が来られてちょっとお話を聞く機会だと伺っております。一緒にタイトルを見てみましょう。「紛争、テロ、難民」この順番を見ると、難民よりもテロが先にきていますね。今の日本社会を反映していると思います。実際に日本人に訊くと、難民のことよりも、圧倒的にテロを心配している人の方が多い。難民のことは他人事だと思われています。テロも、ある時期までは他人事だと思われていたけれど、最近では日本の方も殺害されて、これはもう他人事ではないぞと。」

「私のところにも公安の方が来ます。シリアの状況がよく分からないから、ジャーナリストの方に話を聞きたいと言われて、たまに会って話をします。そこで私がどのような分析をしても、結局は「ISISは日本を狙いますか」という質問にしかならないんですね。そこで私は、「またISISの話をするのですか」と逆に質問しました。彼は公安の人間です。ISISは日本人を脅している、実際に殺している。「ナジーブさんは、シリアの中央政権は空爆を行って、その犠牲者の中から過激なグループへと入る者が出てくるというような話をするが、シリアの中央政権は日本を脅していないじゃないか」と彼は言うのです。公安は日本を守るもの、それは納得できる話です。自国の利益を考えるのは現実的であると思います。しかし、実際に紛争が起きて、難民や貧困といったさまざまな問題の中から、テロという比較的小さな問題が生まれてきます。死傷者の数をまず考えてください。紛争や貧困で亡くなっている人、テロで亡くなる人。もちろんテロは許せないし、対応していかなくてはならない問題だけれども。」

「私の話によって、シリアで何が起きているかを知ってほしい。それもISISではなく、中央政権による空爆について知ってほしい。空爆がある限り紛争は続きます。シリアの紛争すら、70年間の紛争の歴史を見ると小さな問題であるかのように思えます。シリアでは、40年間の独裁が続いていたんです。そこで革命が起きました。軍事政権がそれに対して過剰な暴力で対応して、民主化を目指すたくさんの人々が捉えられ、殺されました。武器を持って身を守ろうとしました。それに対する国家による暴力がどうであったか。」

VTRは救済団体による、募金のために作られたものです。これは、シリア人がいかに可哀想かということではなく、シリア人がシリア人の手によって救われる様子を描いたことで高い評価を得ています。」

VTR

2週間前に生まれた子が、樽型爆弾でも死なずにいた。救出に協力した人々は「アッラー・アクバル(神は偉大なりの意)」と言い、子どもの生存を喜んだ。みなさんは、子どもを救済したときに周りの人々が叫んだのが「アッラー・アクバル」であったことに気がつかれましたか。今世界中で「アッラー・アクバル」と聞いて想像されるのは、ISISが人を殺す瞬間です。それによって、この言葉が知られるようになりました。しかし私たちアラブ人は、これを良いことのあったときに使います。それが元々の使い方です。日本人がすごい花火を見たときに「たまや」というのと似ています。素晴らしい!という意味で使います。しかし、そういったことは知られずに、「アッラー・アクバル」と聞いたら、人が殺されるのではないかと思われてしまう。」

「まずは、テロなどの問題を考える前に、国際社会のもっと根元の部分を考えなくてはならないと思います。もはやあらゆる問題を、他人事と言って済ますことができない時代になりました。紛争は、人の精神に必ず異常をきたします。テロを根絶したいなら、もっと根本的なところから考えなくてはならないと思います。」

 

加藤「ナジーブさんのお話の中では、今こういう状況になっているといった、全体の構造、国家間関係を伺うことができました。それではアブディンさん、こういう政治状況の中で先にお二人から聞いたお話の背景をお話しして頂ければと思います。」

 

アブディン氏「シリアで起きていること、その地域全体で起きていること、または国際政治の世界で起きていること。


「こうした問題は、まとめるのがとても難しいんですけど、時系列順に見ていきたいと思います。アサド政権は空爆によって自国民を犠牲にしています。メディアの捉え方として、例えば欧米諸国では、政治の成熟度が低いアラブ諸国はこんなにも酷いことをやっているんだと、そういったニュアンスで語られるんですけれども、今日はそこから少し離れて、シリアで起きていること、その地域全体で起きていること、または国際政治の世界で起きていること。ちょっとだけにはなりますが、それぞれをリンクさせてみたいと思います。」

「日本のテレビを観ますと、タレントが必ず「ムスリムには、スンニ派とシーア派という区別があって、双方が宗教的立場の違いから対立をしている」などと説明し、単純化した図式を用い、分かりやすい番組を作ります。宗教戦争という捉え方も出来るとは思いますが、独裁政権と民主化を求める国民の対立という面もあります。私はもっと大きい問題だと思っています。」

「中東地域における大国、サウジアラビアとイラン、それぞれがスンニ派、シーア派の盟主を自認しており、この地域では覇権を争う大きな国であります。この2つの国が、どういう同盟関係を持っているかを述べたいと思います。サウジアラビアはアメリカとの同盟があります。イスラエルに次ぐこの地域でのアメリカの同盟国です。1945年にルーズベルトとサウード王国をつくった国王が密約を結んでいる。サウジアラビアの石油を優先的にアメリカの石油会社に輸出する代わりに、アメリカはサウジアラビアの肩をもつような密約を結んでいるんです。ずっと良好な関係が続いていましたが、1973年の第3次中東戦争の折、初めてサウジアラビアがアメリカに物申した。当時パレスチナ問題が深刻化し、かねてよりアメリカのイスラエル支援を問題視していたサウジアラビアは、石油禁輸を盾に取り、苦言を呈した。石油の安定供給が怪しくなったアメリカは、この地域にはどうしても軍事基地をつくらなければならないと考えるようになった。197080年代は冷戦の真っ只中であり、アメリカも現在のように民主化を強くは主張しなかった。むしろ、国民をきちんと統制できる政権を支援した。1979年には、イスラム色の強い者が国王を追放し、イランで革命が起こった。これに対しサウジアラビア国王は、庶民が強い力で結束し合って政権を打倒したことに危機感を覚えるようになる。サウジアラビアは、自国の周辺で体制が揺らぐことを恐れているため、抑圧的な政権を支援します。イランのイスラム革命の電波を危惧し、それに対処するために、CCASG(湾岸諸国協力会議)が設立された。さらに、サウジアラビアを含む湾岸諸国協力会議の国々が米国への依存度を高め、政権基盤の維持を図ろうとした。その後、1990年にイラクがクウェートに侵攻し、湾岸戦争が勃発。私は、この戦争が一つの大きな引き金となって、中東問題は泥沼化してしまったのではないかと考えます。」

「一方のイランでは、1953年当時の首相がアメリカとの条約は不平等である、石油会社を国有化するとの決定をしたために、民主主義の正当な手順で選ばれたにも関わらずアメリカ及びイギリスによって、政権から引きずり降ろされ、国王支援が始まった。そして1979年腐敗した国王による政治が、打倒される革命が起こった。アメリカ大使館での人質事件や、イラン・イラク戦争があり、アメリカとは非常に緊張した関係が続いたものの、最近ではイランに対する経済制裁も解除され、良好な関係に戻りつつあります。」

EUは、30%のガスをロシアから購入しています。最近、カタールとイランにまたがるガス田がみつかり、カタールとイランから欧州に向けてガスを輸出するパイプラインの建設案がそれぞれあった。いずれにしても、パイプラインはシリア領土を通過しなければならない。イランから欧州へガスを輸出する案は欧州にとって好ましくなかった。それは、イランは結局ロシアと同盟関係にあり、ロシアがイランに圧力を企てることにより、このパイプラインからの欧州へのガスの安定供給が保証できないので、欧州にとって、エネルギー政策を通じたロシアからの圧力を解消できないだろうという計算があったからです。一方で、親欧米路線を走るカタールからのガスパイプラインの建設案は、欧州にとって望ましいものだった。そこで、2009年ころに、カタールがシリアのアサドと欧州向けのガスを輸出するための交渉を試みたが、ロシアがアサドに圧力をかけて、結局、シリアはカタールの提案を却下し、パイプライン建設が白紙になったといわれています。」

「そして、3日前にはアメリカとロシアがシリア地域での停戦に合意をしました。ジョン・ケリー国務長官は、これ以上戦闘が長引けば、以降はシリアを一つの国としてみることができないとまで発言している。これは米ロの問題でもあり、欧州とロシアの問題でもあり、また日本もロシアとの関係があるので、出方を窺っていかなくてはならないのではないかと考えています。」

 

加藤「だんだん複雑になってきて、最後にシリアの問題が出てきたんですけど。そして米ロ。この辺り少し付け加えることがあれば、ナジーブさんにお話し頂ければと思います。」

 

ナジーブ氏「アメリカやイギリスの中東での役割が、民主化の大きなハードルとなっていた。しかし今は新しい帝国、ロシアが問題になっています。ロシアが今やっていることは非常に危険なことです。シリアは、アメリカからは支援されなかったと公言している。シリアを支援したのは、イランとロシアでした。これは「偽善」という言葉を使えば単純化できる。シリア人のアイデンティティは国家に基づいていない。部族や、宗派に依っている。シリアの中は今どうなっているのかをお話ししたい。」

ISISは東北部に主な支配地域を持っている。何故かといえばトルコがあるから。トルコはアメリカとの関係がありながら、クルド人問題があるために両勢力に支援を行っている。 ISISの初期の支援はサウジアラビアからであったが、今やシリアや、ロシアに及ぶ。ロシアは空爆によってISISの勢力を叩くと言っておきながら、そこで非ISISの勢力も叩いている。今停戦に及んでも、ISISは停戦合意に入っていないから、空爆を続けますよと言っている。」

「中東にはまず空爆を止めることが必要。英語で言うヘーヴェンが必要です。空爆を止めたら希望が生まれる。アレッポという街が今空爆されているが、そこには28の素晴らしいオンライン雑誌がある。優れたジャーナリズムがある。それを製作できる人々が、理想を持って製作している。とある素晴らしいジャーナリストは、シリアとISISの関係についてのVTRをつくりました。アレッポでは、まだ希望を失っていない、罪のない非ISISの人々が中央政権による攻撃で命を落とし、またISISの手によって拉致され殺害される惨禍にあった。シリア人にもまだ希望があります。へーヴェンがあれば。」

「日本は何をすべきだろうかと訊かれることに対して言いたいんです。もっともっと、成功例の話をたくさんすればいいんじゃないかと思います。例えば、これからは石油よりもガスよりも、リニューアブル・エネルギーが重要になります。原発ではない日本のテクノロジーを積極的に輸出してほしいと思います。もっと世界の人に科学技術を教えてください。」

「まず何より、シリアの市民の80%が空爆によって亡くなっていることを知ってください。そして、日本には日本のことを磨いてほしいと思います。日本は、アラブ諸国にとっては、非欧米の国であるのに発展した、アラブ諸国の手本でもあるんです。」

 

加藤「結局はそこに住んでいた人に全部降りかかることになってしまう。


「当事者もあまりにもバラバラで、全体を把握してなくて、目の前のことをすれば、どうなるかということを考えきれずにやっているという感じがします。」

「瀬谷さんの著書の中に「日本人が思っている以上に、日本はお手本、または良いサンプルになっている」との記載がありました。使える位置、場所を持っているということが書いてあったのですが、それは後で伺うとして、先に質問の方を募りたいと思います。」

 


<質疑応答>

質問者1「今日のお話を聴いて、「日本」のイメージが変わりました。アラブの人は、日本の支援をどのように感じているのか、それを伺えればと思います。」


質問者2「石油資源の話が出たので、原油価格と地域の紛争との関係を説明して頂きたいです。」

 

ナジーブ氏(質問1に対して)

「何もしないことも含めて、日本人が決めるべきだと考えています。移民対策としての研修制度というものがありますが、発想としては良いのではないかと思います。今からスウェーデンのようにするのは非現実的であるし。日本人は、イスラム教について聞くと印象が悪くなるんですけど、そうでなければ受け入れてくれる。インドネシアからの受け入れがいいなら、シリアもいいのではないかとは思います。」

 

アブディン氏(質問2に対して)

「石油価格に関してはロシアへの戒めという面があるかと思います。あとは、アメリカがシェールガスを採掘するのは、過去のサウジアラビアの態度に対してのアメリカの復讐ではないかと思うのです。」

 

加藤「先ほど出た、日本人の国際貢献に関して、瀬谷さんが実際に行っていることをお話しして頂きたいです。」

 

瀬谷氏(質問1に対して)

「私自身は中東、アジア、アフリカでの平和構築活動を専門にし、アフガニスタン、ソマリア、南スーダン、トルコにてシリア難民の支援などを行ってきました。そういうところへ行くと、日本はどうやって復興したのか教えてくれとよく訊かれます。しかし、現場にそのような質問に対して具体的に話せる日本人がいないのがとても残念です。」

「平和貢献のため、日本人の間で主にあがる選択肢が、自衛隊を海外に派遣すべきか、政府が金を出すべきか、戦争反対のデモを起こすべきか、これくらいしかないんです。それ以外にもたくさんできることはあるのに。例えば非軍事的な平和貢献として、日本の専門団体や企業が行って平和構築活動に貢献する。起業も利益を生みながら確実に進出できる場所を探すという考えにならないのが、残念だと思います。」

「今私の所属するJCCPが活動を行っているのが南スーダン、ソマリアなど、日本人がほとんどいない地域ですが、日本の組織であることのメリットを活かせる地域に行っています。ナジーブさんがおっしゃっていたように、日本人ができることのポテンシャルを活かしていったらいいんじゃないかと思います。人種的にも宗教対立がなく、軍事介入を行っていないという面では、完全な中立とは言えないものの比較的平和貢献のしやすい立場にあるかと思います。現地で被害にあった人を支えられるということ、平和をつくれるんだということを、もっと知るべきだと思います。」

 

加藤「現地では、支援に来ている人間がどこの国の人間であるかということは、おおいに関係があるのですか?」

 

瀬谷氏「戦闘を止めさせるためには仲介が必要なんです。間を取り持つためには、信頼関係がなくてはならない。和平交渉の間をアメリカのような国がもつのか、それとも利害関係のない、疑いを持たれない国が行うのとでは大きく違う。」

「チュニジアの市民ネットワーク団体「国民対話カルテット」は、昨年「多元的な民主主義の構築に寄与した」という理由でノーベル平和賞を受賞しました。反政府軍の間を取り持って和平交渉を成し遂げました。政府任せにも国際社会任せにもしない事例だったんですけど、これって日本では知られていなことですよね。そういった役割を担う組織や専門家を日本にも持つことや、そういった現地組織を支援するチャンネルがあること、政府に支援すべきと訴えることができるということをもっと知ってほしい。日本が中立的な立場で支援を行うことができる可能性をもっと広げられるんです。」

「みなさんが直接に募金をする方法もあります。そのほかにも、日本政府が扱っている税金をもっと有効につかうことができるということを知ってほしい。今は自分たちで情報を取りにいける社会なのだから、イスラム国には空爆しかないよねとは思わないでほしい。あのうちの8割は誤爆だと明らかになっている。我々にもっとできることがあることを知ってほしい。さらに、世界の安定化がまわりまわって、日本の安定にも繋がるということを考えれば、他人事とは考えられなくなると思います。それが、本来の意味でのグローバル化であると思います。」

 

 

加藤「現地に、どうして日本企業は少ないのでしょうか。やはり危険があるから、少々のチャンスがあっても無理をしないというのが企業としての判断なのでしょうか。」

 

瀬谷氏「日本の企業からも現地進出のノウハウの問い合わせを頂きます。日本企業は、短いスパンで経営を考えているため、中長期的な投資の計画をするところがないと思います。被害者の保護など、私たちのような援助団体にしかできない平和支援もあるし、産業発掘や雇用創出など、企業の方が長けていることもあるんです。日本の社会に欠如しているのは、危機管理です。リスクは減らせばいいことなのに、それをせずに怖がっている。そうしているうちに、大企業はグローバルな経済に対応しきれなくなって、つぶれていってしまうと思います。そうした考えから、一昨年に「JCCP M株式会社」というアフリカや途上国に進出する企業を支援するコンサルティング会社を新しく立ち上げました。」

 

加藤「きちっと情報を整理して、危機管理をして、もっとビジネスの種を成長させる可能性を知らないということでしょうか。」

 

瀬谷氏「グローバル化に対応できていないんです。世界情勢に疎いというツケが今まわってきている、それにすら気づけていないというのが現状ではないでしょうか。」

 

質問者3「日本政府によるアフリカ支援は、現場から見てどれだけ行き届いているのでしょうか。」

 

アブディン氏「お金はたくさん出してくれるよねとは、現地の方も言ってくれています。しかし、現地に専門家がいないので、ポリシーが分からない。国連からの要請を待ってやっている感じがする。日本は引き続き、ODAの額を増やすべきではなく、もっと具体性をもって日本の良さを活かした支援をやっていくべきだと思います。」

 

ナジーブ氏「紛争地域の前に、まずは日本の企業の入っていない安定地域から入ってもらえればいいんじゃないかなと思います。日本人は現地へ行って孤立を恐れる。現地人と組めばいいのに、何年いても現地語を話さなかったりする。この点は中国人とは正反対。最初に、日本人のためにそういったサポートができる機関を設けるべき。国際交流の手助けをするところから始めなければならないでしょう。」

「石油の多いナイジェリアでは混乱が続いており、ISISのようなボコハラムという組織がある。そうした地域で、日本のアニメ専用チャンネルができた。まずは安定地域から。ドバイでも同じことができるはずです。」

 

加藤「本当の問題はODAの額じゃない。額の前に中身、すなわち今の使い方をどうするかの方が大事。」


「他の分野でも、例えば文化予算はフランスの半分だと批判がある。文化予算の有効な使われ方がフランスの1割だとするなら、額を倍にする前に使い方をきちんとしないと、結局はODAを含めて無駄がふえるだけ。現地を見るという初歩的なところが欠けている、リアリティーが欠けているためです。」

 

アブディン氏「どうして日本では思うように人材が育たないか。欧米は移民を受け入れ、中国は華僑というネットワークをもっていた。日本にはそれがなかった。ナジーブさんのお話にもあったように、他国とのパイプをつくるということをしてこなかったからではないかと思います。」

 

瀬谷氏「外務省や政府関係者とも率直に意見交換や提言をしています。納得行かない政策も多いが、政府に愚痴を言っているだけでは何も変わらない。政府にできることもあるけど、民間団体や個人一人ひとりにできることもある。全ての人が世界のことを自分事としてまで考えるのは難しいだろうけど、メディアの報道などに触れた際に、たまにその問題について考えてほしい。たったひとりの支援や行動が紛争地の誰かの人生を変える支援に結びつくという事実がある。何をしたって無駄じゃないかとは考えないでほしい。ちょっとした支援でもいいので、動いてほしい。それがこれからの日本社会でしなければならないことではないかと思います。」

 

加藤「政府も瀬谷氏のところに話を訊きに行くようになった。もっと横同士で繋がってみたらいいと思います。お互いの役割をもっと柔らかくすればいいんじゃないかと思います。 企業もいっしょではないでしょうか。」

 

ナジーブ氏「日本人の好奇心を活動に繋げてほしいと思います。情報収集とか積極的にするのに、結局は動かないということが多いような気がします。チュニジアの対話のメカニズムは、民主主義のなかでも本当に素晴らしいものです。そのチュニジアが、FOODEX(「FOODEX JAPAN/国際食品・飲料展」)に大きなブースを出展する。FOODEXなどは、ビジネスになっているけれども、支援にもなっているんです。」

「「アラブ人独特」などということは考えないでほしい。そんなことはない。普通だと思ってほしいんです。一昔前は、南米に関してカトリックは民主主義とは相容れないんだという本がたくさん出版されていた。今は、ムスリムは民主主義とは相容れないなどと言われます。日本人だってカミカゼと言われたら嫌でしょう。それと同じことです。」

 

加藤「アレッポの話は知らなかったし、もっと色々なことを知るべきだと思いました。本日は以上です。ありがとうございました。」

 


 

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