• ゲスト発言

第233回J.I.フォーラム  島のくらしから考える  2017/02/23(木)開催
ゲスト
伊藤 光 (新潟県 佐渡市 副市長)   

門 康彦 (兵庫県 淡路市長)

片桐 幸雄 (島研究家)

田中 敦詞 (北海道 奥尻町副町長) 

平野 秀樹 (学校法人 青森山田学園 本部長)  

コーディネーター:加藤 秀樹(構想日本代表) 

【議事概要】第233回J.I.フォーラム
2017.02.23「島のくらしから考える ―淡路・奥尻・佐渡の魅力、生かし方―」

 於:アルカディア市ヶ谷

<ゲスト>
伊藤 光 (新潟県 佐渡市 副市長)
門 康彦  (兵庫県 淡路市長)
片桐 幸雄 (島研究家)
田中 敦詞  (北海道 奥尻町副町長)     
平野  秀樹 (学校法人 青森山田学園 本部長)

<コーディネーター>
加藤秀樹(構想日本 代表)
 


日本には7000弱の島があると言われています。そして島にはそれぞれ独特の伝統文化や歴史がありますが、住民がむしろその魅力や可能性に気づいていないとも言われます。
構想日本は、兵庫県淡路市、北海道奥尻町、新潟県佐渡市の3市町の、魅力探しのお手伝いをすることになりました。国生み神話で有名な淡路市、三平汁発祥の地である奥尻町、全国能楽部隊の1/3を持つ佐渡市。受け継がれてきた伝統はとても魅力的です。一方、阪神淡路大震災、北海道南西沖地震、台風による被害など防災面での共通課題もあります。
島の「くらし」の現地調査やインタビューの報告も交えながら、議論をしていただきます。
ほかの地域の魅力探しにも大いに参考になると思います。

第233回J.I.フォーラム「島のくらしから考える ―淡路・奥尻・佐渡の魅力、生かし方―」では、新潟県佐渡市副市長の伊藤光、兵庫県淡路市長の門康彦、島研究家の片桐幸雄、北海道奥尻町副市長の田中敦詞、学校法人青森山田学園本部長の平野秀樹 の5名をゲストに迎えました。

加藤代表「視点を変えることで島の可能性がみえてくる」

 

加藤 「今日は233回目のフォーラムです。今日は奥尻、佐渡、淡路島の3つの島を中心に話を進めていきたいと思っています。各島の行政のトップにおられる方々に今後、島にある自治体として行政運営をどうしていくのか、今後何を考えていかなければならないのかということを軸にしてお話を伺えればと思います。また、日本中の離島を訪ね歩き、島にとても詳しい青森山田学園の平野さん、そして島研究家の片桐さんには島全体の話と3島を中心とした話の2つの切り口から話をして頂きたいと思います。」

平野氏「20年間歩いて分かった『島のくらしの魅力』とは何か」
 


平野氏(スライドを使いながら説明)「20年前の農水省勤務時代から世界の離島を歩き研究をしている。アイルランドのアラン諸島。漁師用セーターが有名。80年前から活用し始めた。」
「伝統の力があるところは女性の活躍が見られる。」
「日本の悪石島(あくせきじま)は日本で最も行くのに時間のかかる島ではないか。人口71人。奄美市からヘリで90分。71人の誕生日は住んでいる人、働きに来ている人全員でお祝いをする。鳥居をくぐる時は必ず拝む。縦(祖父母ー両親ー子ども)の教育文化が残っている。ただし、別れが早い(15歳くらいで離れる)」
「人口が少ない地域は原語の教育を必須にしている地域が多い。島の教育的要素は大事。教育・研修としての島の使い方はあるのではないか。島根県隠岐の島は研修や視察が重要な収入源になっている」
「台湾の蘭嶼(らんしょ)島(とう)の原住民は文字を持たない部族。島の南端に核廃棄物貯蔵庫がある(文字を持たない原住民の間では『悪いくすり』と言われている)。このような国境警備、防衛、原子力施設という活用が見られる」
「島への2つの対策がある。一つ目は、コルシカ型(国土連続制)。フランスの人口30万人の大きな島であるコルシカ島は、コルシカ型(国土連続制)という制度をもって海上コースや空路の補助をしている。国境を越えた連続的な振興。日本も今年の4月から71の島が有人国境離島の対象となって少しだけ補助率が上がることになった。もう一つは済州島型(投資移民制)。観光としての島への投資をはかる。日本も似たような流れで対馬、北海道、沖縄で島振興が図られている。」

片桐氏「島民たちは意外と島の暮らしに困っていない -3島の住民との対話を通して-」



片桐氏「3島の共通点は海水に囲まれている程度では。淡路は明石海峡大橋で神戸と結ばれている。島民の意識がない。佐渡は島ではあるが面積が広い(855㎢)島の意識はあるが離島のイメージはない。奥尻はまさに離島。最も島を感じた。」
「3島どこでも『いつかきっと帰りたくなるまちづくり』という話を聞いたが、帰って来たくなるまちとはどういうものか、誰に帰って来たくなってほしいのかはまだ明確ではない。」
「一般的に島には何もないと言われるが本当だろうか。ゆったりとした時間の流れ(島時間)があり、食べ物や自然が豊富で、歴史もある。実際に住んでいる人に聞いてみると多くの人が『困っているものはあまりない』と言っていた。」
「実際に行ってみての島の良さは以下の5つに感じる。①強いコミュニティ、②家の鍵を締めないような安全性、➂島で生活が完結している(島外に出なくても生きていける)、④島時間がある、⑤近所に食べ物をあげる文化があるのでお金があまりなくても暮らせる(奥尻には魚屋がない!)」
「逆に短所として、①人口減が止まらない(特に若い人と、急激な自然減)、②大学などに通いにくい、➂医療・介護施設が少ない、④後継者がいない、⑤働く場所がない(特に若い人)。ただし、くらしている人はそれを許容しているようにも感じる」
「防災の観点での共通点もある。3島とも消防団の組織率が高い(約3%)。特に奥尻と淡路は大震災を経験している。今後の課題として当時の語り部の育成、記憶が薄れていくことを前提にして若い世代への教育についてが挙げられている」
「3島の特徴を簡単まとめると、淡路は明石大橋の開通により物理的にも島ではなくなり都市化が進んでいる。奥尻は経済的格差が少ない。お金があまりなくても住める。佐渡市は島が大きいので集落単位で生活に差がある。個性はあるが島の暮らしにあまり困っていないと感じたことが共通点。」

田中副町長(奥尻町)「教育に重点を置いて島外から人を呼び込む」



田中氏「以前奥尻は日本海の宝の島と言われるほど魚が採れた。逆にオホーツクはまだホタテがなかったが今は逆。1993年の震災時に島民は7000人くらいいた。震災復興事業の終了や漁業の衰退により現在は2800人まで減少。そのうち2500人が有権者。子どもが少ない」
「これまでは経済を重視してきた町長が多かったが今は教育を重視。昨年7月から道立の奥尻高校を町立に移管。全国から募集した結果来年度は島外受験生が8人。隔週実施の90分間のオールイングリッシュ授業などカリキュラムの魅力が主な理由。島内受験生は中学卒業生22名のうち10名。12名は島外に受験。」
「奥尻は130年くらい前に禁酒島にした歴史がある。天気が悪く漁に出られないと朝から酒を飲みすぎるので禁酒にしたという歴史。逆に現在は奥尻の米と水を道内の栗山町の蔵元で醸造し日本酒を作っている」

伊藤副市長(佐渡市)「島民はとても元気でのびのびしている」
 


伊藤副市長「佐渡は能や歌舞伎が昔から盛んで大きな特徴は舞うのが市民であること。稲作が盛ん。島内の米を一気にではなく段階的に本土に売っている。防災面でも活用しており、島内にある米は8か月間分はある(「流通備蓄」と言われれる)」
「島内に出産ができる病院が一つ(農協系)。島が広いので車の移動で1時間半がかかるため課題となっている。医療水準としては心配な状態。ただし、地方の特徴でもあるが元気な高齢者が多く、みなさんのびのびと生活を送っている。一番人口の多い時は10数万人。今は半分以下。」

門市長(淡路市)「すべてが『明』すべてが『暗』というものはない」



門市長「淡路島は3市で構成。島の面積は600㎢(シンガポールと同じくらい)。島全体の人口は14万人。戦争直後は23万人だが江戸時代は7万人だった。どこを基準にして考えるかは行政にいる人間として重要。」
「市は物理的には島でなくなり利便性を手に入れたが課題ももらった。船便、船着き場が壊滅。船員の雇用がなくなった。通勤通学にはとても良く使われるが、逆に1年に1度も通らない人もいる。淡路には道の駅が2つ、SAもとても賑やか。つまり、すべてが「明」すべてが「暗」というものはない」
「淡路は昨年、日本遺産に認定された。日本最古の歴史書の古事記にも登場している、色々な場所で遺跡が出土しており、点を線や面にしてストーリーを作ることにより認定。認定に当たって最も活躍したのが淡路青年会議所(JC)。島内に行政区は3市だがJCは島で一つ。間をつないでくれた。」
「医療については奥尻や佐渡とは少し違う。神戸の病院に1時間くらいで行ける。淡路市には30年間、産婦人科がなかったが病院を誘致したことにより子どもが産まれるようになった。その代わり誘致にあたっては土地の無償貸与など犠牲も払っている。これも明と暗。」

伊藤副町長「調査報告にもあったが島に住む人は困っていないと感じる。県内所得は最も低いが金銭給付を考えなければ豊かな生活ができる。親の世代で考えると子どもには跡を継いでほしいとはあまり考えず大学で島を離れさせる傾向にある」

加藤「ヨーロッパの小さい町に行くと特に遊ぶとりたてて特別のものがあるわけじゃなくても年寄りから若者まで多くの住民が『自分の町は世界一だ』と言う。魅力の価値観が違うからではないか。親の世代は島に戻らない方が良いと感じて外に出そうとするが、若い世代の価値観がすべてそうではないのでは。結果的に価値観の押し付けになってないだろうか。」

門市長「企業誘致をやってきてこれまで18社来てくれた。その一つに教育特区を取って株式会社立のAIE国際高校を誘致した。単位制の高校。自由なスタイルを求める子どもや様々な課題を持つ子どもが来ている。」

田中副町長「島のくらしの特徴として、日常の生活にはあまりお金がかからないが慶弔費はかかる。かなり広い範囲で払っている。最近亡くなる方が多いのでよりかかるようになる。それだけ地域が濃密とも言える。」

平野氏「島民が3000人を割ると飛行機が成り立たなくなる。100人以下の人口になると200万円の所得も難しくなる。その部分を行政が公共事業で生活の糧を作っていることが大部分。」

門市長「島内で他の2市には負けたくない。でも一緒にやれることはやっていく。東京は理論先行で色んなことを教えてくれる。他方、田舎は現場がある。その両面を見ておく必要がある。」

加藤「今、どうしのぐかとこれからどうするかはダブルで考えていかなければならない。教育の観点で考えた時に、今を考えると高校の無償化や全生徒のタブレットの貸与が必要かも知れないが、何十年後かには高等教育を受けない方が仕事と暮らしを通して多くの事を学び幸せなくらしがある、本来そのような選択肢があることを頭のどこかに考えておく必要がある」

伊藤副市長「島の中で完結しているがゆえの課題も感じる。例えば牛乳のプラントは集約化の流れがあり、国の基準に当てはめると佐渡のプラントは合致しなくなる。島は本土に比べて流通コストが掛かることが大きい特徴だからこそ、制度は一律ではなく地域に応じたものになってほしい。」

加藤「福島で聞いた言葉で『孫ターン』というものがあった。地域おこし協力隊の中にも孫ターンの人が結構いる。田舎の良さを感じる人たちが増えているのではないだろうか。この流れは注目するべきなのではないだろうか。」

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