• ゲスト発言

第235回J.I.フォーラム 「先端から末端、そして先端へ」  2017/05/19(金)開催
ゲスト
市川 晃 (経済同友会地方分権委員会委員長、住友林業取締役社長)

福嶋 浩彦 (中央学院大学 教授・元消費者庁 長官・元我孫子市長)

横山 忠始 (香川県 三豊市長)         他

【議事概要】第235回「J.I.フォーラム」2017.05.19            於:アルカディア市ヶ谷

 

「先端から末端、そして先端へ」

 

<ゲスト>

市川 晃(経済同友会地方分権委員会委員長、住友林業代表取締役社長)

福嶋 浩彦(中央学院大学教授・元消費者庁長官・元我孫子市長)

横山 忠始(香川県三豊市長)

 

<コーディネーター>

加藤秀樹(構想日本 代表)

 

【議事概要】第235J.I.フォーラム

2017.05.19「先端から末端、そして先端へ」

(↑写真①JI撮影  P1019843

 

今年は憲法と同じく地方自治法も制定70年である。

「地方自治」を辞書でひくと「地方公共団体の政治が国の関与によらず(団体自治)住民の意思に基づいて行われること(住民自治)」とある。

ある県庁所在地の市長が「国が法律で決めていないことはできない」と言ったという話を聞いた。これでは「自治」ではなく、国の「下請け」である。国、地方の公務員の中には市町村を行政の「末端」と呼ぶ人が少なくない。

下請けから自治へ。末端から先端へ。理念、現場、経営など様々な角度から時代を見据えた地方自治の姿を描いていただく。

 

235J.I.フォーラム「先端から末端、そして先端へ」では、経済同友会地方分権委員会委員長、住友林業代表取締役社長の市川晃、中央学院大学教授・元消費者庁長官・元我孫子市長の福嶋浩彦、香川県三豊市長の横山忠始 の3名をゲストに迎えた。

 

加藤代表「行政はもっと目を広く開かないといけない」

(↑写真②JI撮影  P1019893

加藤 「今日は235回目のフォーラム。先端から末端、そして先端へ。これは、地方自治の話である。地方自治法は、憲法と同じ時に制定されてから今年で70年であり、地方自治の仕組みについて定めた法律である。憲法にも地方自治について書かれている。今日は、現役の三豊市長として地方自治体の課題に直面している横山さん、かつて安孫子市長や消費者庁長官を務め、筋金入りの地方自治の闘士である福嶋さん、経済同友会の地方分権委員長として提言をまとめ、民間企業経営者である市川さんにそれぞれの立場から地方自治について話を伺う。」

 

横山市長「基礎自治体を本社化しなければいけない」

(↑写真③235JI地方自治  P1140987

横山市長「ある大学生の言葉。『地方に若者がいないのは働く場所がないからじゃない、魅力がないから』まさにそうだと思う。今後は基礎自治体を本社化しなければいけない。そのためには物事の決定(権限)を現場に近い基礎自治体に移すこと。徹底して委譲しなければいけない。」

「三豊市はアンチコンパクトシティと言っている。地域を集約化するのではなく分散化することが必要。国から地方だけではなく基礎自治体の中でも地域内分権をする必要がある。」

「都道府県が抵抗勢力になることがある。国と直接やりとりをすることが物事の決定のスピードが速くなると実感している。意思決定の階層は少ない方が良い。」

「全国どこの基礎自治体も職員を減らしているが増やした方が良いのではないかと思っている。国に出向に出すことで外部の刺激を三豊市内に持って帰ってきてくれる。それが組織に刺激を与えることになる。」

 

加藤「必ずしも国は物事が早く出来が良いわけでもない。都道府県も抵抗することが多いが国も同じように感じる。」

福嶋氏「市民が自分たちで決めない限り自治は高まらない」

(↑写真④235JI地方自治 P1140781

福嶋氏「横山市長のような市長が増えることを心から願う。私が我孫子市長をしていた時代は、市民から出発して必要だと思ったことは国にお伺いを立てることなく自分の責任でやっていた。それが今は全体的には何もやらずに国に言われたことをやっていて、一方で不満を言っているように思う。」

「日本全体の人口は減っていく。それを国の号令に基づいて人口の奪い合いをしようとしている。今後は人口が減ることを前提として、うまく小さくしながら質を高められるかどうか。これを国に言われたようにやっていては絶対に良くならない。市民が自分たちで決めない限り自治は高まらない。」

「今は逆行しているとすら思う。どのような計画を作れば国がOKを出してくれるか、どのような事業をやれば国から補助金をもらえるかという発想になっている自治体が多いように感じる。基本は市民が中心に動かなければならないが、行政がまずは実践していかなければならない。」

「公共施設をとってみても、古くなったから建替えるのではなく、いかに複合化できるか、小規模多機能化できるか、他の自治体と共同利用はできないかなどお金をかけずに質を高めることを考えなければならない。」

 

加藤「国は現場から離れていてリアリティに欠如している。例えば2年前に地方創生の号令のもとすべての自治体が人口ビジョンを作ったが、国は出生率2.07を目指すと書いて自治体もその数字を使いながら推計をした。しかし現状は1.4程度。根拠もない机上の空論になっている。」

 

 

市川氏「自治体から民間企業への人事交流を広げていくべき」

(↑写真⑤235JI地方自治 P1140903

市川氏(スライドを使いながら説明)「経済同友会で昨年11月に地方分権に関する提言を公表した。人口減少と高齢化の進展によって自治体間の人口・財政力の格差が開いた。それによって『まばらな地域』が増加し行政対応が複雑化している。」

「今後は、近接性の原則(近いところで物事を決める)と補完性の原則(現場に近いところから物事を決め、できないことをより大きな枠組みで補完する)の徹底が必要。」

1つ目の提言は住民と行政がバイラテラルに創り上げる地方自治の確立。これは構想日本が全国で行っていることを広げること。」

「構想日本が協力して福岡県大刀洗町で行っている住民協議会を視察した。行政と住民が対決する構図ではなく住民同士が議論できるようにし、自助・共助・公助の役割分担を実際に起きている物事から考えていくもの。町長の強いリーダーシップの下で行われており、とてもユニークな取組み。」

「自治体職員のプロジェクトマネジメント能力の向上も必要。民間企業との人事交流を広げていくべき。公の担い手は自治会など伝統的コミュニティが中心だったが高齢化による空洞化が問題になっている。負担感の少ないボランティアが今後重要になる。」

2つ目の提言は戦略的な広域連携の推進。これまでは規模の集約化による効率的な行政運営をベースにしたものだったが、今後は事業や機能ごとに枠組みが異なるような連携もあって良いのではないか。」

3つ目の提言は基礎自治体の強化。税財源と人材が一体となった権限委譲の推進が必要。地方交付税に変わる税制度の確立や地方間の格差是正のための水平調整などの仕組みを作るべき。行政の物事を決める仕組みを変えることで産業の活性化にもなる。経済界からも地方分権を主張していきたい。」

 

加藤「経済界の提言はオリンピック関係や経済成長などが多い中、地味な分野でもある地方分権について提言をされていることは素晴らしい。また、以前大刀洗町の取組みの紹介をしたらすぐに現地まで行って話を聞いてくれた。このフットワークの軽さはとても重要だと思う。」

「日本はゴミの処理、病院、福祉あらゆることを個々の自治体がフルセットでやってきた。サービスのやり方(例えば子ども医療費の無料化の年齢など)も同じようにやろうとする。」

 

福嶋氏「市長時代、新たにできた法律に基づいて協議会を作ることになり、既存の協議会とセットにしたら県から違法だと言われた。市長の判断で県の言うことは聞かずに市では条例を作りパブリックコメントに出した。すると県からクレーム。市長の責任で一切話を聞かないと言い続けたら3日で県側が折れた。」

「地方分権は責任を持つということ。責任を持ちたくない、つまり自分たちに権限を持ちたくないと思っている行政関係者も多い。」

 

横山市長「同友会の提言にあった民間企業との人事交流はとても重要。三豊市でも進めようとしたが利益供与に関する疑念が出てうまくいかなかった。また、福嶋氏が市長時代の市長会はいつも意見が多く出て発言したくてもできなかったが、今は発言する人がほとんどいなくて、おとなしくなっている。」

 

市川氏「国と民間企業の人事交流は法整備ができている。国から民間企業には約500人、民間企業から国には約1300人行っている。地方自治体と民間企業の間の制度はまだないので進めていきたい。」

 

加藤「外務省の官僚も市町村に出向したほうが良い。外交というと大きくとらえられるが、交渉する内容は農業など現場のこと。結局現場を知らなければ交渉もできない。だからこそこれまで議論に出ているように、都道府県ではなく基礎自治体に行くべき。」

 

福嶋氏「消費者庁長官時代の部下である官僚が町役場に出向した際、定時で終わることで体は楽になったけれど住民に見られながら仕事をすることの緊張感がすごいと言っていた。そもそも行政機関の中を住民が歩いていること自体が珍しいと。これが現場。」

「意外に知られていないが、慣習として自治体職員が国に行くときの給与は自治体負担、国の職員が自治体に来るときも自治体負担になっている。市町村と都道府県の関係も同様。まったく対等になっていない。」

 

加藤「今の福嶋氏の話こそが今日のタイトルにも関連していて、国からすると自分たちが先端なのだから末端である地方の職員が来るときはそっちで負担するという考え方になるのではないか。」

 

 

福嶋氏「自治体は意外に自由にできることがある。今ある権限でできる限りを尽くすことが重要」

横山市長「地方では無縁墓地の問題が大きくなっている。お墓を管理する人がいなくなり荒廃している。そういう状況になった時に市に買い取ってくれという話がよく出る。困った時に何でも行政がやることはできない。市長としてはしんどいが自分たちでやるべきことはやらなきゃならないと伝えていきたい。」

 

加藤「荒川区のタワーマンションで防災に関しての議論を定期的にしている。日常的なつながりはまったくなかったのでいきなり防災の事を話そうとしても誰も集まらない。だからまずは楽しくなることをやってつながりを作ることを目的としていた。今は多くの人が集まっている。」

 

福嶋氏「自由にできないことが多いと思っている自治体もあるが意外にできることがある。理由をつけてやっていないことも多い。まずは今ある権限でできる限りを尽くすことが重要。」

 

加藤「福嶋氏の仰る通りで、法律に地方が行うことを事細かに義務付けていることはほとんどない。専門家の中でも法律を読まずにできないという人がいる。まずは法律を読んでみるべき。その時に最も重要なのは第一条に書いている目的。何のため、どのような理念で作られた法律なのかを理解すべき。」

 

横山市長「キーマンは現場じゃないと見つからない。キーマンは補助金を欲しがらない。いかにして自分たちでやるかを考える。このような人たちがまちを作っていく。」

 

福嶋氏「横山市長に付け加えていえば、キーマンがやった先進事例を国が全国展開という名のもとに補助金を付けると大概うまくいかない。」

「経済成長では既に持続可能にならなくなっていると思う。ライフスタイルの転換が必要になるしそれができるのは地域でしかないと思う。だからこそ自治の確立が必要。」

「公務員が身分を選ぶのか仕事を選ぶのかを選択できるようにすべき。自分の担当していた仕事が民間に移った時に、そのまま身分を変えて民間に移れるような環境作りが必要。今は身分をそのままにせざるを得ない。」

 

加藤「以前横山市長が秘書をされていた大平総理が、総理になる直前に次のことを言っている。『我々は今、春を過ぎ、夏を越え、それから、ようやく、静かな秋を迎えようとしておるんじゃないかと。秋というのは、みんなが物を静かに考える。(中略)そして、次に来るべき春に備えて、我々の体質をもういっぺん見直していく。我々の家庭はこれでいいのか、我々の企業はこれでいいのか、我々の市町村の状態はこれでいいのか、国の在り方はこれでいいのか。(中略)我々はもう一度、静かに反省いたしまして、この味淡くあるけれども、本然の人生を生きることができる呼吸を、覚えなければならないと思うわけであります。(中略)そして、新たな味わいを持った、成熟した人生の生きがいということを求め合っていける春を、お互いに迎えたいものと思うのであります。』40年前に成長ありきではないことを考えていた政治家もいた。」

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