• ゲスト発言

第244回J.I.フォーラム 「働き方」改革よりも「働くこと」の改革  2018/02/27(火)開催
ゲスト
岩佐 文夫 (フリーランス / 編集者)

遠山 正道 (株式会社スマイルズ 代表取締役社長)
 
中村 天江 (リクルートワークス研究所 労働政策センター長)
 
平田 麻莉 (一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 代表理事)

【議事概要】第244回「J.I.フォーラム」2018.02.27   於:日本財団ビル

『「働き方」改革よりも「働くこと」の改革』

〈ゲスト〉
岩佐 文夫 (フリーランス / 編集者)
遠山 正道 (株式会社スマイルズ 代表取締役社長)
中村 天江 (リクルートワークス研究所 労働政策センター長)
加藤 秀樹 (構想日本 代表)
〈コーディネーター〉
平田 麻莉 (一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 代表理事)

【議事概要】第244回「J.I.フォーラム」2018.02.27   於:日本財団ビル

『「働き方」改革よりも「働くこと」の改革』

政府の働き方改革での話題の中心は、勤務時間と給料の払い方です。
そこでは主に、雇用の改革についての議論が行われているのだと思います。これらは大事なことですが、本当はもっと根本から「働く」ことについて、考えないといけないのではないでしょうか。
働くことの意味、働くことへの時間の使い方、そして働き方。仕事の中身を含めて様々な働き方をしている人たちに、働くことそのものについて熱く語って頂きます。

第244回J.I.フォーラム 『「働き方」改革よりも「働くこと」の改革 』 では、編集者 岩佐 文夫氏、株式会社スマイルズ 代表取締役社長 遠山 正道氏、リクルートワークス研究所 労働政策センター長 中村天江氏、 一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 代表理事 平田麻莉氏の4名をお迎えいたしました。今回はJIフォーラム始まって以来の構想日本代表 加藤秀樹がパネリストとなり、平田氏にコーディネーターをしていただきました。

平田氏「自律的にキャリアを形成していこう」
平田氏「まずは、それぞれのお仕事について。私は、加藤さんの大学時代のゼミ生であり、構想日本でも非常勤スタッフもしていた。今、プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会を設立。私自身はフリーランスとして8年目。」
「今、国内に1122万人フリーランスがいるとされている。雇用関係によらない働き方をする方が増えてきている。職種も多様化している。多様化しているので、課題も複雑化している。」
「協会のビジョンは、誰もが自分らしく働ける社会の実現で、働き方の選択肢を増やしていきたい。日本人は就職活動の時にすごく頑張って就社するが、その後のキャリアを人事に丸投げしてしまいがち。それを自分の手に戻していこう、自律的にキャリアを形成していこうということを目指している。」


加藤「自己実現と働くことの距離が近かったものが遠くなっていった、それをもう一回近づける」
加藤「働き方改革の背景のようなものを一般的に整理すると、戦前から戦後しばらくまで、職場といえば自営業や家族経営のようなところが多かった。ある意味ではほとんどが、今ならば“ブラック”と言えるような働き方だったのかもしれないが、ほとんどの人はそう思っていなかった。それは働くということと、いわゆる自己実現という自分でこれをやるんだというものの距離が近かったんだと思う。」
「成長期を通して、企業も大きくなり、世の中も複雑になり、様々なことが制度化されて、今の雇用のスタイルが出来上がってきたと思う。同時にそれに対して、賃金、働き方、プロモーション、政府・企業それぞれが提供する福祉、組合のあり方がワンセットで仕組みとして整えられていった。」
「ところが、バブルを通して、日本の企業が広い意味でのリストラを迫られるようになった。それと同時に中国などの追い上げがあり、競争が激しくなって、日本では、正規から非正規・派遣へ雇用が移っていった。働き方と雇用のミスマッチが出てきた1つの背景だと思う。」
「今の働き方改革が対応しようとしているのはかなり前にでき上がった制度と今の派遣・非正規のミスマッチをどうにかしようというものが中心。しかし、もっと大きなミスマッチができていて、自己実現と働くことの距離が近かったものが遠くなっていった、それをもう一回近づけるという意味で考えなければいけない。」

中村氏「自分らしいライフキャリアをどうやって実現するか」
中村氏「リクルートワークス研究所で未来予測の仕事をしていて、2030年のワークモデルを発表した。今、9割の人が会社に雇われている。しかし、戦後は5割以上の人が自営業など雇われずに働いていた。60年間に会社に庇護される働き方があまりに浸透したが故に、かえって働き方の自由度が損なわれてしまった。」
「働くことを研究している立場からいうと、今は、働き方・生き方の転換点。一人一人がどういう風に生きていきたいのか、問われる時代に来ている。人生100年時代、キャリアのつくり方には個人差が生まれる。」
「(スライドを使用しながら)この50年でキャリア観はずいぶん変わった。『キャリア観1.0』:高度経済成長期につくられた日本的雇用において、一番の成功は社長になること。これは終身雇用の中でのキャリア観。バブル崩壊後からは、『キャリア観2.0』:特定の組織に閉じず、新しい技能を身につけ、新しい貢献をしていく。プロフェッショナルになることが一つの目指す姿。キャリア観1.0と2.0は一見違うが、上昇型のキャリア志向という点は同じ。成長意欲が高い人にはフィットするキャリア観だが、成長という言葉がしっくりこない人もいる。
最近は、仕事中心のキャリア観から、ライフ全体のキャリア観にシフトしている。『キャリア観3.0』:仕事をしながら家族を大事に、もしくは、家庭生活を大事にしながら仕事もというライフキャリア。男性のイクメンも、子供のいる女性管理職も、じわじわ増えている。ただ、会社のダイバーシティー施策が仕事と家庭生活の両立にあまりにもよっているため、独身で、家族の介護も子育てもない人からは、不満も出ている。今後は『キャリア観4.0』:社会に出てから学校で学んだり、市民としてコミュニティ活動に参加したり、友人たちと遊んだり、何に集中するのもあり。どれを選ぶかは個人次第という新しいスタイルが出てきている。」
「キャリア観4.0は、まさにSuperのライフキャリアレインボー。多様な人生のロールの中から、どのロールを、いつ、いくつ、組み合わせるかは個人の選択。自分らしいロールの組み合わせをどうやって実現するのか。「働く」を自分の手に取り戻す時機に来ている。」


遠山氏「自分で何をやるべきか考えてやるそれが楽しいし、それが仕事」
遠山氏「『スマイルズ』というスープストックやネクタイやなどの色々なことをやっている会社。」
「かつて働いていた三菱商事とスマイルズの違いを聞かれて、違うことだらけだと思ったが、あえていうと、人生という言葉をよく使うようになった。仕事と人生がそのまま重なっている。それが会社にとっても本人にとっても価値、エネルギーの源泉と実感している。」
「自分たちが何を大事に働いているか。自分ごととしてやっているか。スマイルズにはマーケティングがなく、自分たちが作って、提案することが面白い。外に理由があると、人のせいにしてしまうから。『個人の引力』小さいほうがやりやすい。一冊の本だけを売る盛岡書店とか、小さいから、リスクが少ないし、思い切ったことができる。また、ユニークなこともできる。人生と重なって、仕事になっている。それは信用できる。ほっといても、一人で全部やるから、成果もすごくわかりやすい。」
「業務外業務ということをしている。一日、違う仕事をしますよというもの。
これは自分ができる仕事の試し打ちみたいなもの。これをやってみると、部長はできるけど、他はできない。のように、意外と自分がやれることは少ないとわかる。」
「上司に支持されてやるのは作業と呼んでいる。自分で何をやるべきか考えてやるそれが楽しいし、それが仕事。やれと言えば言うほど、チャンスを摘み取っている感じがする。」

岩佐氏「仕事と仕事じゃないものの境界線は?」
岩佐氏「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの編集長などを勤め、31年間会社で働いたが、昨年の夏にフリーランスになった。もともと、会社員に向いてないなと思っていたし、仕事が好きなので70歳過ぎても仕事を続けていたいと思っていたから。社会人として自分が世の中に何の価値を提供できるか確かめたいという思いもあり、フリーランスになった。」
「仕事と仕事じゃないものの境界線は何かを考えるようになった。楽しいかつらいか?お金がもらえるかどうか?家事と仕事に序列はあるのか? 生きるために必要な活動が仕事ではない?生きるために必要な仕事の範囲は?などを考えた。」
「実際、会社を辞めてみたら暇にならなかった。それは自分の好きなことしているから。仕事はアウトプットを求められるけれど、インプットも必要。インプットってプライベートがない。自分の全ての経験がインプットとなる。インプットとアウトプットを分けるのも違うと思い、働くこととは生きることそのものでは?という結論に至った。」


平田氏「皆さん、それぞれ働き方が違い、一直線ではない。やりたいことと働くを近づけてきたと思う。一方で、やりたいことを仕事にできることは幸せで、誰もができることではない。皆さんにとって、働くこととはどういうことなのか?それが形になるためにはどのように工夫しているのか?」

遠山氏「一人一人の身の丈に合ったことを仕事にすることが幸せに通ずる。サイズ感が大事。小さいことの方がよりおもしろい時代。1億のビジネスより100億のビジネスが偉いということはどこにもない。むしろ小さい方が、価値があることができている。自分がやっている感覚、やりがい、当事者意識が大事。」

岩佐氏「キャリアを棒にふるということはなくて、やってきたことは全て無駄にはならないし、回り道はない。どこかで全部つながっている。編集者だけではなく、色々なことをできるようにもう一つの山を持っておきたいと思った。慣れたことをやるのはつまらないから、やったことないけど、おもしろそうなもの仕事をやっている。」

加藤「 みなさんのお話を聞いていると、究極の裁量労働で無限に働いているように思えるが、自分の裁量でやっている人は裁量労働制ではどうなるのかと思った。」

遠山氏「私は境目がない。週末も何もない。ただ好きでやっている。」

中村氏「裁量労働では労働と報酬の交通整理が必要。働くことに対して求めているものは、人によって全然違う。遠山さんのような方々は労働の対価が、賃金でも時間でもない。個人と組織の関係性が多様になってきているので、自分にとってちょうどいいサイズ、自分らしい働き方を見つけることが大切。職場でそういう話ができれば、働き方のバリエーションはさらに増えていくのではないか。」

加藤「したいことをすればいいという意見がよく出たが、皆さんはそもそもやりたいことが本当にあったんですか?僕は昔、特になかった。やりたいことが多くの人にあるのか?どこからでてくるのか?」

中村氏「大学3年生から社会人3年目までを対象にしたキャリア支援サービスを運営していたことあるが、やりたいことが明確になっているのは一握り。誰もがやりたいことを見つけられるという前提はあまりに乱暴。でも、自分の持ち味なら誰もが見つけられる。苦にならずに捗ること。自分の持ち味を活かすことが、楽しい未来を作っていくことになると思う。」

遠山氏「仕事は恋のよう。恋は現れるもの。でも、待っているだけじゃなくて、磨いたり、出会いのアンテナを立てると、ある種の運命的なものでてくる。これが本当の恋だと思ったら制度云々ではなく、恋すればいいという感じ。」

岩佐氏「自分も見つけられてないから、やりたいことを見つけられる人はすごいと思う。ただ、僕は不慣れなことにワクワクする。自分にとってワクワクする感覚が意識的になってきた。」

質問「国会では裁量労働制を問題にしているが、国がやるべきことは労働者の命を守ることで、仕組みを作っても仕方ないのでは?」

中村氏「労働者の命は何よりも大事。だからといって、何もかも制度でがんじがらめにすればいいというわけではない。もはや、サービス経済化やテクノロジーの進化によって、時間あたりの生産個数や単価をみる労働時間管理方法だけではうまくいかない。インプットのバライエティを含め、アウトプットをあげることが期待され始めている。仕事の仕方に応じて時間管理の選択肢を増やしていくことが、働き方のフレキシビリティを高める面もある。」

加藤「今日のみなさんはすべて裁量。同じ感じで働きたくて、ここでもっとやっておきたいと思い会社で残ってやっている人もいる。そういう人の働く意欲、自分の満足度をどうするのか。また、一方で、結果的に上司からのおしつけの人もいる。その境界は外からはわからない。後者に対して、そういうのがあってはいけないとメディアも言うし、会社休む人が増えたら困るという。しかし、制度は全てを割れるものではない。それが行政の限界。その先は、会社の雰囲気や経営者、従業員のそれを許容するかどうかの態度とか全体の話で、制度だけで考えてはいけないと思う。」

質問「選ばざるを得ない状況やそういう環境をどうするのか?やりたい業務ができない人をどう守るのか?」

中村氏「もはや、職場で正社員と呼ばれていても有期雇用だったり、解雇されたりする。だれかが守ってくれるという前提での議論には限界がある。これからは、自分の契約は自分で握ることも重要。」

平田氏「最後にメッセージをお願いします。」

中村氏「働くことに不安を感じ社会に出たくないという若者が少なくない。働くって悪くない、楽しいことも沢山ある。そんな未来像をみせるのは、私も含めて、ここに集まってくださった皆さん、大人の役割だと思う。」

平田氏「自分のサイズで働ける人は幸せだと思う。
人生100年だと、自分にとって最適な働き方はずっと変わって行く。1つの働き方にこだわらず、自分のサイズ、働き方に選択肢を増やしていくことが大事なことだなと思った。」

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