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タイトル::【No.798】「避難先での放射能いじめ 地道に、十分な教育が必要」
発行日::2017/03/09
本文:
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  J.I.メールニュース No.798 2017.03.09 発行 

 「避難先での放射能いじめ 地道に、十分な教育が必要」

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【1】<巻頭寄稿文>

  「避難先での放射能いじめ 地道に、十分な教育が必要」

     南相馬市立総合病院 外科医師   澤野 豊明 
 
【2】<お知らせ> 

   (1) 第234回J.I.フォーラム  3月22日(水)開催

     「原発」を通して 私たちの生き方、社会を考え直す
    
   (2) 今後の構想日本の活動

【3】<アーカイブ(過去の寄稿文)>

   「3.11」から 5ヶ月後の福島の様子です。

   J.I.メールニュースNo.516 2011.08.18発行
  
   原発事故・被災者の声 ~福島県中通りから~
  
          (有)農作業互助会 代表取締役社長 鈴木 博之

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【1】「避難先での放射能いじめ 地道に、十分な教育が必要」

     南相馬市立総合病院 外科医師   澤野 豊明

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最近、東日本大震災に続く福島第一原発事故を機に福島から他の地域に避難した子供たちが、避難先の横浜や千葉でいじめに遭っていたというニュースを見聞きし、残念な気持ちになった。というのも私は横浜出身、千葉大学卒業で、被災地医療に貢献したいという思いから、3年前にこの「地震、津波、原発災害の被災地」にある現在の病院で働くことを決めたからだ。

私は先の差別の背景には、放射線に関する教育の不足があると考える。

たとえば被曝は外部と内部被曝に分けられるが、その被曝量はそれぞれ空間線量と経口摂取した物の線量に依って決まる。つまり、被曝した人から、それが伝染することはない。正しい知識があれば「放射能・菌がうつる」といった発言は滑稽に聞こえる。

事故当初、南相馬では被曝への恐れから過剰に水道水や食物を避ける、屋外活動を避ける人が多かった。当院の坪倉正治医師は、小学生やその保護者などに対して放射線教育を続けている。その内容は、きのこやイノシシ肉などの一部の食物を避ければ内部被曝は避けられること、外部被曝量は、自宅のように長く過ごす場所の空間線量に依存し、屋外の線量は自宅に比べほとんど年間被曝線量に影響しないため、屋外活動をしないことによる運動制限の方が健康に悪影響を与えうること、などだ。

また市内で除染を行う作業員の中には「おれは放射線で死ぬ」と言う人もいた。しかし、除染作業員の被曝量は平均0.6mSv/年(頭部CTで被曝する線量の約1/4)ととても低い。以前の私たちの研究では、入院した作業員の60%以上の人が生活習慣病を患い、その中で自分の生活習慣病を認識していない人や気づいていながら未治療の人が70-80%程度おり、作業員では生活習慣病のリスクが高いことが示された。つまり、作業員の場合放射線による健康被害よりも、生活習慣病のリスクの方が数十倍高いと思われる。私は2016年から彼らに生活習慣病を中心に健康に関する健康啓発を続けている。

地道な教育が成果を上げ、当院での内部被曝検診では2012年夏から被爆検出者が減り、現在では検出者が出ない月の方が多い。市の調査では、まだまだ食物や水道水への忌避行動は見られるが、放射線を過剰に心配する住民や除染作業員は減少した。

しかしもっと広範な教育はそう簡単ではない。先日、中学校の理科教諭は「放射線教育は中学校3年生で行うこととなっているが、教科書にはあっさりとしか触れられていない。良いテキストを探さなければ。」と話していた。彼女のようにモチベーションのある教員に教われば、放射線に対する理解も深まるかもしれない。しかし、もし教科書しか使わない授業を行えば、ワイドショーなどの偏った情報よりもインパクトがなく、放射線に関する理解が深まらないだろう。

放射線災害の大半は風評被害と言われて久しいが、いまだ差別はなくならない。これは、放射線に関する正しい知識が国民の間で共有されていないからだ。差別をなくすために必要なのは、十分な教育体制だ。放射線教育なくして、福島の復興はない。

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澤野 豊明 (さわの とよあき )

2008年3月横浜高校卒業。2014年3月に千葉大学医学部卒業。被災地での医療に興味を持ち、同年4月より福島第一原発から北へ23kmに位置する南相馬市立総合病院で初期研修を開始。その後、除染作業員の健康問題に着目した研究に従事し、作業員の健康を守るため発信を続けている。2016年4月より同病院で外科医師として勤務。

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【2】(1)第234回J.I.フォーラム  3月22日(水)  

      「原発」を通して 私たちの生き方、社会を考え直す

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「原発」と言うと、イエスかノーか、とかくイデオロギー的なレッテル貼りが前面に出ます。だから有識者、社会的立場のある人は口をつぐむ傾向があります。そして、政治や行政はその対立を回避しようとする結果、私たちが一番考えないといけないことが議論されていません。

本来、原発を含むエネルギーの問題は、私たちの生き方、社会のあり方の根幹に関わることです。個々の原発の再稼働云々だけでは問題の本質に迫れません。

3人のゲストに、原発に関する基本的な事実と論点を整理して頂き、原発問題が私たちに迫っているのは何かを考えたいと思います。


  ◯日 時:2017年 3月22日(水) 18:30~20:30 (開場18:00) 

  ◯会 場:アルカディア市ヶ谷 4階「鳳凰」(千代田区九段北4-2-25)TEL:03-3261-9921
                ※場所にご注意ください 

  ◯ゲスト:神里 達博(千葉大学 教授)

        齊藤 誠 (一橋大学 大学院経済学研究科教授)

        鈴木 達治郎 (長崎大学 核兵器廃絶研究センター長)

  ◯コーディネーター:加藤 秀樹(構想日本代表)

  ◯主 催:構想日本

  ◯定 員:100名

  ◯参加費:一般 2,000円 / 学生 500円 (構想日本会員は無料です)
                ※学生の方は受付にて学生証をご提示ください。

  ◯懇親会参加費:4,000円(ご希望の方は懇親会参加とお申込み時に明記して下さい)
         ※フォーラム終了後、ゲストを囲んで、懇親会を開催いたします。

           アルカディア市ヶ谷  2F レストラン

 ※フォーラムへのご参加は3月22日(水)12:00まで info@kosonippon.org  にお願いします。

  HPからのお申し込みはこちら http://www.kosonippon.org/forum/index.php 

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(2)《今後の構想日本の活動》

2017年4月9日(日)神奈川県伊勢原市議会会派創政会「住民協議会」(全2回中の第2回)

今年度の構想日本の『事業仕分け・住民協議会・施設仕分け実施一覧』詳細は、以下のURLよりご覧いただけます。

http://kosonippon.org/blog/?page_id=1079

 《その他》

2016年4月~隔週月曜日 京都大学経済学研究科・経済学部 特殊講義「公共経営論1・2」 (代表 加藤秀樹)

  公共政策の各論を毎回ゲストの講義で進めています。これまでのゲストは、
  株式会社もり 代表 原野守弘氏、内閣府 迎賓館長 別府充彦氏、一般社団法人瀬戸内サーカスファクトリー 代表理事 田中未知子氏、長岡京市長 中小路健吾氏、厚木市こども未来部長 小瀬村寿美子氏、元朝日新聞社 代表取締役社長 木村伊量氏、財務省 事務次官 佐藤慎一氏、株式会社マイファーム 代表取締役社長 西辻一真氏(構想日本メルマガ「農業の現場あるあるシリーズ」執筆者)、日本ポリグル株式会社 代表取締役会長 小田兼利氏、外務省 アジア大洋州局南部アジア部長 梨田和也氏、金融庁 検査局長 三井秀範氏(金融庁長官から急遽変更)、衆議院議員 岡田克也氏。

2016年9月~毎週木曜日 法政大学 「NPO論」講義 (総括ディレクター伊藤伸)

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【3】<アーカイブ(過去の寄稿文)> 

  日に日に被災者の声が、聞こえなくなってきている気がします。 
    
  JIメールニュースNo.516 2011.08.18発行
  
  原発事故・被災者の声 ~福島県中通りから~
  
          (有)農作業互助会 代表取締役社長 鈴木 博之

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私の住んでいる地域は、原発事故現場から60Kmの距離にあります。

高村光太郎の「千恵子妙」の舞台となった安達太良山の麓です。水源にはダムもなく川魚の山女が棲む清流で稲を栽培し40数年が過ぎました。私の家系は先祖を辿れば6代目です。母屋を解体したときの台栓には「天保」の記載がありました。生粋の百姓です。

原発事故の3月14日の報道には驚きはしましたが自分が被害者になるとは思っていませんでした。

4月6日に県から土壌調査の結果が公表されて初めて事の重大さに絶句しました。当村の土壌汚染がトップクラスに位置していたのです。畑地で7000ベクレルの作付制限値を大きく越える数値でした。
 
それからは右往左往の毎日です。

野菜が出荷制限になると米にも影響が及び、村営の直売所の売上は8割減。私は其処で米を販売していたので同様の減収です。早々に運転資金が必要になりJA、銀行に駆け込みましたが通常業務で「販売減のため返済に疑問がある」という理由で高利の資金しか貸せないとの返答でした。

役場に被災証明の交付を申請しましたが「前例がないので交付できない」との対応。県、国に村を指導するように陳情行脚しましたが「たらい回し」でした。
 
そんな中、何とか対応してくれたのが政府系金融機関でした。手当てが出来なければ今頃は「倒産」の憂き目に遭っていたでしょう。

事故から5ヶ月、日々新たな問題が発生し対処に苦慮しています。原発事故は複雑過ぎて理解できません。

損害賠償に関する法律は「刀を抜いたら刃が無かった」わけで、使いものにならず、対応は後手後手。関係者は言い訳の連続です。自動車事故に例をとれば、自賠責保険・任意保険制度が無く、運転者が無責任だったらということで、恐ろしい状況です。事故なのに司法が介入できない制度設計になっているように思います。

「原発は本当に安全なの」、「放射性物質は危険でないの」と不安がるお客様の声に対して、うまく説明できない自分に苛立ちを感じる日々です。
 
先祖から継承した土地を後継者に当たり前に継承することができない現状にどう向き合うのか日々苦悩しています。同業者が2人自殺しています。
 
生きる目標を「東電や国に対する怒り」で何とか保っているような現状です。
 
土壌汚染の終息は数十年単位です。私の死後も後継者は放射性物質と向き合わなければならない運命にあります。私の代で精算したいが果たして可能であろうか・・・出来秋(できあき)を目前にした近況です。

 願わくは、「無視しよう福島県、無かったことにしよう原発事故」の風潮が漂っている現実が「夢」でありますように・・・。


 (構想日本 加藤より)

 放射線汚染から身を護りたい。誰もがそう思います。しかし、これが行き過ぎるとどうなるでしょうか。「頑張ろう東北」、「頑張ろう日本」のかけ声がある一方で、東北や関東産の野菜、米、牛肉などが極端に売れなくなっています。

 細菌も、ヴィールスも、有害物質も、どこにでもあります。ゼロにはならないし、する必要もない。それが自然界なのだと思います。放射性物質についても、もちろん基準値を超えるのは論外ですが、しかし、数値は限りなくゼロに近い方がいい、という行動を多くの人がとると、その行動の被害者もどんどん増えます。鈴木さんもその一人です。これでは東北も日本も頑張りようがありません。

 まずは、自分の行動が全体の足を引っ張らないようにしなければ、と思いました。

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追伸:「福島農地原状回復訴訟」の判決が、福島地方裁判所 郡山支部で、4月14日午後1時10分に出る予定です。

    原発関連訴訟(本筋)の判決 第1号になるかもしれません。原告は筆者外8名、被告は東京電力株式会社と東京電力ホールディングス株式会社です。

    裁判の概要はこちら → http://kosonippon.org/documents/2017/mail/fukushimasiryou.pdf

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