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タイトル::【No.822 】「タブー視される 行政と民間企業のサービス連携」
発行日::2017/08/24
本文:
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  J.I.メールニュース No.822 2017.08.24 発行

   「タブー視される 行政と民間企業のサービス連携」

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【1】<巻頭寄稿文>

   「タブー視される 行政と民間企業のサービス連携」

     豊明市健康福祉部高齢者福祉課 課長補佐   松本 小牧


【2】<お知らせ>

   (1) 第239回J.I.フォーラム  9月20日(水)

      自治体発 「ふるさと住民票」というアイデア

     「関係人口」をふやしゼロサムからプラスサムへ

   (2) 『自分ごと化会議』= 群馬県太田市

       第3回住民協議会 9月2日(土)

   (3) Yahoo!ニュースオーサー 新記事投稿


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【1】「タブー視される 行政と民間企業のサービス連携」

     豊明市健康福祉部高齢者福祉課 課長補佐   松本 小牧

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豊明市では介護保険では対応できないニーズに対し、民間サービスを市民に積極的に紹介する取り組みを始めた。

1時間三千円で自宅の片付けをする廃棄物処理業者、カラオケボックスで開催する健康体操教室、無料の送迎バスで割安に利用できる温泉施設。これらは、市と民間企業が協議を重ねて作り上げたサービスの一例である。市では今年2月に9つの民間企業・団体と「公的保険外サービスの創出・活用促進に関する協定」を締結した。

きっかけは、急速に進む高齢化である。豊明市は名古屋市の南東部に隣接し人口6万8000人、市の高齢化率は25.1%。団塊世代の人口が多く、2025年には後期高齢者が現在の1.5倍となる見込みで、今後医療や介護のニーズが急激に増えることが予想されている。

それを予感させるのが、近年の軽度要介護者数と給付費の急激な伸びである。特に急増しているのがデイサービスであり、平成22年からのわずか5年間に、給付費は2.5倍、年平均35%の伸びを示していた。

しかし問題なのは給付費の伸びではなく、それが本当に利用者の健康維持・改善につながったのかという視点である。そこで一番軽度である要支援1認定者の1年後を調べたところ 57%が悪化、4人に1人は要介護状態となっていることが明らかになった。

公的保険で専門的な介護予防サービスを提供しながら、なぜたった1年で要介護状態になってしまうのか。要支援1.2といえば、歩行、入浴などに必要な身体機能はほとんど介助を必要としないが、掃除や調理、買い物、外出といった生活行為に困難を抱え始めた程度である。

多くの症例を分析して見えてきたのは、要支援者がこれまで送ってきたふつうの暮らしを維持していくには、単に外出をデイサービスに、家事をヘルパーに置き換えることでは決して達成できないこと。魅力的な外での活動や、自立した生活手段の提供を通じて、本人の意欲にまでアプローチできなければ、結果として重度化してしまうということであった。

例えばある地域では、本人が自力で行ける生活圏域に牛乳屋さんと新聞屋さんしかない。であればこの2軒を巻き込んで、いかに生活を支えるかを考えていかなければ、高齢者は「地域」で暮らしていけないのだ。こうして職員の中に、地域にあるものはなんでも活用するという発想が生まれていった。

ある時、名古屋市にある温泉施設の無料送迎バスが豊明市内を走っているのを非常勤職員が見つけた。

出かける足がないために、週1回、唯一の外出先としてデイサービスを利用している高齢者は数多くいる。無料送迎バスに乗って温泉施設に行けば、お風呂に入って食事ができ、半日過ごして帰って来れる。温泉施設には床屋や地元野菜を売るコーナーもあり、高齢者の生活を支えるサービスとなる可能性がある。そんな場所を、行政の支援もなく企業独自のサービスとして提供してくれているのである。

しかし、そのバスにはほとんど乗客がいなかった。そこで翌日すぐに訪問し、市として利用客を増やすお手伝いをしたいと申し入れをしたところ、大変驚かれた。

またコープあいちは市との協議で、店舗購入した商品をすべてその日の午後に自宅まで無料配達するサービス「ふれあい便」を始めた。コープは個人宅配を行なっているが、注文票のマークシート記入が難しい等、利用しにくいという高齢者は多い。

ふれあい便は、商品を自分の目で見て選べる楽しさと、持ち帰りの心配をせずに購入できる便利さが好評を得た。さらに、店舗に行けない高齢者のために電話注文サービスもスタートさせた。

人口の年齢構成が急激に変わる中、企業が高齢者のニーズにあった商品やサービスを開発していくことは当たり前であろう。しかしながら、いいサービスや商品を開発しても、利用する市民がいなければ、やがて地域から撤退していってしまう。
特に使って欲しい高齢者は、情報が届かなかったり、慣れた生活を変えることを好まない傾向があるため、新しい商品やサービスが浸透しにくい。

地域包括支援センターや、ケアマネジャーと現場にいて感じるのは、老いを支えるサービスや商品を「使いこなすための支援」が不可欠であるということだ。また、利用する市民があってこそ、高齢者の生活も支えてくれる使いやすいサービスが地域に根付いていくのではないか。

企業は高齢者のニーズがどこにあるのか、どうすればサービスを高齢者に知ってもらえるのかが分からず、一方高齢者は自分が欲しいサービスがどこにあるのか分からずにいる。

その点基礎自治体は、高齢者のニーズをすばやくキャッチし、高齢者やケアマネジャー等の支援者に直接情報を伝えることができる強みを持っている。

行政が民間企業と高齢者の間で情報の仲介をすることで、生活を支える質が高くて利用しやすいサービスをたくさん創出し、地域に根付かせることができないだろうか。

こうした想いから、市は協議を重ねて作り上げた民間サービスを、市民に積極的に紹介する取り組みを始めている。前述の温泉バスの乗車率は2.5倍に増え、ふれあい便はサービス開始から利用者は2倍、一回あたりの客単価(購入額)も6000円を超えているという好調ぶりである。また一連の取り組みを経て、昨年度(平成28年度)のデイサービスの伸び率は、対前年比2.5%増に収まった。

これまで高齢者支援は、どうしても介護保険サービスに利用者を当てはめるだけの支援となりがちだった。その結果が給付費の増大と、高齢者の急速な重度化である。

これからはその人に本当に必要な場所や支援を、介護保険に限定せず幅広く探し、もしなければ地域で共に創り出す。
公的保険サービスで対応できなければ、しかたなく保険外の市場サービス利用という思考を、まずは市場サービス、その後に公的保険でという、高齢者支援に関わる者の思考プロセスの転換が必要なのではないか。

こうした実践を通じて、一地方自治体の現場から日本全国へ、問題提起をしていきたいと考えている。

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 松本 小牧 (まつもと こまき)

 平成13年豊明市入庁。平成17年から7年間、市民協働所管部局でNPO、自治会、市民まつりなどを担当し、地域の課題に行政と住民が共に取り組む経験を多く積む。平成24年介護保険担当。平成25年に東京財団市区町村職員人材育成プログラムに参加。全国の自治体職員と共に「地域課題」の捉え方、「住民自治」の本質を学ぶ。平成27年高齢者福祉課地域ケア推進担当係長、平成29年4月より現職。

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【2】(1) 第239回J.I.フォーラム  9月20日(水)

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    自治体発 「ふるさと住民票」というアイデア

   「関係人口」をふやしゼロサムからプラスサムへ

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構想日本と12の自治体で、2015年から「ふるさと住民票」の活動を進めています。

住民票はないけれど故郷に愛着がある、仕事や介護で複数の地域に住んでいるなど、現代人は自治体に対してより柔軟な関係を求めています。これに対して「ふるさと住民票」は、人々と自治体の「複線的な関係」を提供しようというものです。そして、実施5市町村は「ふるさと住民」が400名余ふえたのです。

今、各地で人口増の取り組みが行われていますが、日本全体の人口が減る時代には、所詮「とりあい」に終わります。

しかし「関係人口」すなわち地域に関わる人をふやせば、ゼロサムがプラスサムになるのです。国の制度の枠にとどまらず、独自の知恵で関係人口をふやす。これが人口減少時代の自治体の姿ではないでしょうか。


   ◯日 時: 2017年 9月20日(水) 18:30~20:30(開場18:00)

   ◯会 場: 日本財団ビル2階 大会議室  港区赤坂1-2-2 TEL 03-6229-5111

             ※場所にご注意下さい

   ◯ゲスト: 菅野 典雄 (福島県飯舘村長)

         福嶋 浩彦 (中央学院大学 教授・元消費者庁 長官・元我孫子市長)

         安冨 圭司 (佐那河内村 総務企画課)

         山下 祐介 (首都大学東京 准教授)

   ◯コーディネーター : 加藤 秀樹(構想日本代表)

   ◯主  催 : 構想日本

   ◯定  員 : 160名

   ◯参加費 : 一般 2,000円 / 学生 500円 (構想日本会員は無料です)
               ※学生の方は受付にて学生証をご提示ください。

   ◯懇親会参加費 : 4,000円(ご希望の方は下記懇親会参加に○をつけてください)
              ※ゲストを囲んで、懇親会を開催いたします。
            「頤和園(いわえん)溜池山王店」 港区赤坂1-1-12 TEL 03-3584-4531

 ※フォーラムへのご参加は9月20日(水)12:00まで info@kosonippon.org  にお願いします。

 HPからのお申し込みはこちら http://www.kosonippon.org/forum/index.php

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(2) 『自分ごと化会議』= 群馬県太田市 第3回住民協議会 9月2日(土)

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「健康づくり」をテーマに、群馬県太田市で第3回「住民協議会」が開かれます。

 構想日本はこれを、第2回『自分ごと化会議』と位置づけています。

【開催日時】 9月 2日(土)15:00~18:00
      (ナビゲーターによる論点提示、これまでの議論を参考に地域の強みや課題について意見交換)

【参加者】 太田市住民協議会委員(太田市民50名)★
      コーディネーター(論点整理役、構想日本より派遣)
      太田市職員
      ナビゲーター (論点提示役)

        色平 哲郎 (佐久総合病院 地域医療部 医師)

        岸 紅子 (NPO法人日本ホリスティックビューティ協会 代表理事)

        中田 華寿子(元ライフネット生命 常務取締役)

      ★無作為に選んだ市民1,500名に案内を送付し、応募のあった50名。

【会 場】 太田市民会館  (太田市飯塚町200番地1)TEL.0276-57-8577

      ※会場についてのお問い合わせは、太田市企画政策課企画政策係まで(0276-47-1892)

【入 場】 無料(どなたでも傍聴できます) ※途中の入退室可、事前申し込み不要

【主 催】 太田市

【協 力】 構想日本

※詳細は、太田市ホームページでもご覧いただけます。
http://www.city.ota.gunma.jp/005gyosei/0020-001kikaku-kikaku/2017-0710-jk.html

お問い合せ:構想日本 伊藤/町田
TEL:03-5275-5607、email:shiwake@kosonippon.org

【自分ごと化会議】

社会がある程度うまく回っていると、住民にとって政治・行政は「他人事」になります。
そうすると、無駄な行政や財政赤字が拡大し、政治が社会の変化に遅れるなどのツケが私たちに返ってきます。自分たちの周りのことから考え、話し合い、政治・行政を「自分事」とすることが必要です。
構想日本では、「自分事」とする具体的な方法として、住民協議会や事業仕分けを行ってきました。今の日本の状況をみると、もっと早く、広く自分事化を進めないといけません。
第1回は、「地方議会」をテーマに東京で開催しました。
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 (3) Yahoo!ニュースオーサー 新記事投稿

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  Yahooニュースにオーサーとして新しい記事を投稿しました。ぜひ御覧ください。

   代表 加藤 秀樹

 ◇2017年8月4日 ヤフーニュース 「自分ごと化会議」のすゝめ

    https://news.yahoo.co.jp/byline/katohideki/20170804-00074148/

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