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国と地方


1997/09/20(土)
【論文】燃料税制の枠組み見直し~道路特定財源から環境税へ~

揮発油税(ガソリン税)などの燃料税は、その大部分が道路建設を目的とする特定財源となっている。これは道路の恩恵を受ける自動車利用者が道路整備の費用を負担するという「受益者負担」の考え方に基づく。 

 しかし、視点を変えれば、自動車利用者は、化石燃料の消費による利便を受ける一方、CO2を大気中に撒き散らすことによって地球環境に負荷をかけているのだが、現行制度は自動車利用者にこのような費用を負担させる仕組みになっていない。今日求められているのは、地球規模での受益者負担の原則を実現するような仕組みである。 



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 それでは、現行の制度を具体的にどのように変えればよいのか。まず道路特定財源制度の改革であるが、既にいくつかの方策が提案されている。 

 まず、特定財源税目の一般財源化である。一般に財政が悪化すると特定財源による硬直化の弊害が目立つようになり、特定財源の転用論が主張される。特に形式上一般財源である自動車重量税に関しては、実質上も一般財源化せよというもっともな主張が繰り返されてきた。 

 しかし、現にこれが実現していないのは、一つには道路財源をいじることに関係者の強い反発があるからである。もう一つには、転用を主張する財政当局側にも泣き所がある。石油ガス税を除く特定財源税目の税率は昭和五十年度前後からいずれも暫定税率となっている。当初は石油の供給見込等将来にわたる道路整備計画の前提が流動的であることからとられた措置であったが、その後暫定税率が数次にわたって引き上げられる一方で、法律上定められた税率(本法税率)は二十年来据え置かれたままである。一般財源化となると、この暫定税率を維持する理由がなくなるので本法税率へ復帰すべきであるという主張が強力になる。しかし例えば揮発油税を本法税率に戻すと、税率は現在の半分になってしまう。 

 次に、特定財源の目的拡大論、具体的には総合交通体系整備事業への充当論がある。道路は総合的な交通体系の一部であり、財源の共有は交通システム相互間のよりよいバランスの追求に資すると考えられる。しかし、問題はこれらの事業の所管が主として建設省と運輸省にまたがっており、縦割りの壁が存在することである。因みに政府の省庁再編案は両省を国土開発省に統合することとしており、この提案の最大のボトルネックは克服されることになるかもしれない。ただし、これは実現したとしても二○○一年以降のことであり、依然不確定要素は大きい。 



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 次に以上の改革案を地球環境の観点から再点検してみたい。まず一般財源化案については、本法税率への復帰、即ち実質的な税率の引き下げを伴うとすると非常に問題がある。これでは自動車利用を促進こそすれ抑制することにはならないからである。昨今提唱されている環境税導入の議論などとも完全に逆行してしまう。次に目的拡大論だが、これは新制度の運用によってはより環境にやさしい交通システムへの移行につながると期待できる。しかし、交通体系間のバランスは環境への配慮を最優先して決定されるとは限らず、また実際の公共事業の決定プロセスを見れば、そのような期待は望み薄である。温暖化防止京都会議を十二月に控え、国内においても思い切った環境対策が望まれる現下の状況にも鑑みて、この際、環境指向の燃料税制への移行を明確に打ち出してはどうだろうか。 

 ここでの提案は、まず現行特定財源の一般財源化を行う一方、自動車利用に係る負担は現状程度に維持することである。例えば、暫定税率を廃止すると同時に本法税率を現行暫定税率のレベルまで引き上げる。或いは本法税率復帰に伴って生じる負担の軽減を実質的に相殺するような新税を創設する。重要な点は、この税率引き上げないし新税の創設は環境への配慮からなされるということである。従って、それにより確保される税収相当額は温暖化防止関連事業などに充てるべきである。 

 具体的な制度のデザインの一例として、実施が比較的容易であると思われる自動車重量税のみの一般財源化のケースを考える。自動車重量税はその名称の通り自動車の重量に応じて税率が決まっている。これを一般財源化して本法税率に戻し、それによる税の軽減額とトータルで同程度を「環境保全税」などの名称で燃料税に上乗せして徴収する。自動車利用者から見れば全体の負担の中で燃料税の比重が高まるので、より燃費のよい車に買い替えようというインセンティブが働く。燃料に係る税は今より重くなるが、実は我が国における現行の燃料課税は国際的に見て決して高いとは言えないのである。 

 一般財源化プラス環境財源への振り替えが実現すれば、まず道路事業は財源の保証を失うが、事業自体の評価や政策的判断がより明確に行われるようになれば、結果的に事業への信頼が増すことになるだろう。財政当局としても、将来にわたって柔軟な財政運営の余地が広がる。自動車利用者も、現行の負担の見直しとセットになった新たな負担の導入であれば、受け入れやすいと思われる。そして結果として環境財源を確保することができれば、我が国の国際的な面目も立つというものだ。 


※本稿は我々構想日本のスタッフである石塚二葉が著作し、1997年9月20日付朝日新聞夕刊に掲載された原稿を部分的に修正したものです。



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