• 構想日本の活動

国と地方


1999/06/30(水)
日本経済の体質改善のための税制改正

1.提言の趣旨 

(1)日本経済の現状は、アジア経済金融危機等の個別要因に構造変化が重なり、さらに過剰な「危機」説や悲観論が加わって、経済の先行きに対するコンフィデンス・クライシスが起きている状態と言える。
(2)しかしながら、政府の景気対策は公共事業と特別減税から抜け出ていない。
(3)このような需要喚起策には、一時的な景気刺激効果は期待できるとしても、持続的な経済回復のためには、逆に政府の経済政策に依存しない社会・経済構造を構築することが不可欠である。
(4)経済の強化のためには、税制などの(制度の)国際間競争力を強化することが必要であり、構想日本としては今後進められる税制改正の議論に先立ち、この提言を行うこととした。
(5)ボーダーレス社会の進展に伴い、我が国の経済政策に対する他国からの要請も強くなっている。これに対して、まず自国の経済運営について確固とした理念と道筋を示し、その上で他国に対しても主張していかなければならない。 

2.経済の現状判断 

(1)97年度の実質経済成長率は、昨年後半時点では0.5%前後と見込まれており、我が国の潜在成長率を2~3%とみれば、両者のギャップは、いわゆる「消費税率引き上げを含む9兆円の財政デフレ」でほぼ説明できた。
 しかし、経済企画庁発表による97年度の国内総生産(GDP)は、0.7%のマイナス成長となった。この背景には、昨年秋以降顕在化したアジア経済金融危機の影響と、金融システム不安をきっかけとした消費・投資の萎縮がある。
(2)全体として見れば、景気は悪化している。しかし一方で、過去最高収益をあげる企業、株価がピークを更新し続けている企業も多い。
 経済の実態は、中長期でみた期待成長率が低下し、また日本が市場経済システムにより大きく依拠したものへと移行する過程で、企業や産業の優勝劣敗が明確化してきたということである。 

3.基本的な考え方 

(1)中長期的な経済活性化のイニシアティブをとるのは政府ではなく民間産業・企業や個人であるという認識に立って、起業意欲の昂進を通じた新旧産業・企業の交代を促し企業の活力を高めるとともに、個人の労働・投資へのインセンティブの強化につながるような施策を重点的に行うことが不可欠である。
 現に、80年代に景気停滞や産業競争力の後退に苦しんだアメリカやイギリスが、90年代に入り急速な景気回復、持続的な景気拡大を実現している背景には、80年代後半以降実施されたサプライ・サイド強化策や、規制緩和・歳出削減による政府のスリム化とそれを受けた民間企業のリストラ努力があるとの指摘が多い。
(2)またこの場合、当面の景気浮揚だけに着目し、その財政構造や長期的な国民生活水準への影響を鑑みない政策論は危険ですらある。
 経済活性化を目的とした減税策をとる場合は、それに伴う歳入減を国債で賄うのではなく、歳出削減を行うことによって政府のスリム化と財政の健全化を目指すなど、歳出・歳入両面からの整合性を持った施策が不可欠である。 

4.提言 

 サプライ・サイドに着目し、企業の民間設備投資や新産業の創出、個人の事業投資活動や消費の促進につながる構造調整策として、以下の政策を提言する。 

(1)法人税実効税率40%への引き下げ(約3兆円の減税)
(2)・個人所得課税の最高税率の法人税率と同水準(40%)への引き下げ(約5兆円の減税)
 - 所得区分境界を400万円,1000万円,2000万円に
 - 税率を8%,16%,24%,32%の4段階に
 ・個人所得にかかる課税最低限の200万円への引き下げ(約3兆円の増収)、個人所得の全員申告制の導入、給与所得控除制度の見直しなどによる課税ベースの拡大と公平性の実現
(3)相続税の最高税率の40%への引き下げ 

 以上の施策は、当面の経済効果にも着目し即時先行実施する。なお、それぞれの税率については、40%は当面の水準であり、将来的には更なる引き下げを検討する。また、これらの施策に伴う歳入減への対応として、以下の(4)を5年以内に達成する。更に、この間の財政不均衡是正の補助策として(5)を実施するとともに、財政全般の整合性ある実施を確保するため(6)を作成する。 

(4)・上記減税額(差し引き約5兆円)に見合った歳出規模の削減
 ・赤字国債と建設国債の区分廃止
 ・公共投資における特定財源の廃止や年金・医療福祉分野における市場メカニズムの活用
(5)国家資産の流動化による歳入拡大
(6)各施策の経済効果を踏まえた透明性・実現性の高い中期財政計画の策定 

以上 



竹中 平蔵(慶応義塾大学 教授)
杉浦 哲郎(富士総合研究所経済調査部長)
加藤 秀樹(構想日本 代表) 


お問合せ先: 構想日本
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