• 構想日本の活動

年金制度


2000/10/27(金)
新基礎年金制度の創設と国民的な議論を提言する

〔問題提起〕 

1.「有識者会議」の議論は不十分

首相の私的諮問機関「社会保障構造の在り方について考える有識者会議」が、最終報告書をとりまとめた。高齢者にも応分負担を求めるなど評価すべき点もあるが、残念ながら、現行の社会保険方式を維持すべきとの結論ありきのものであり、国民に対して社会保障の選択肢を示すものではないし、深刻な問題を抱える国民年金制度をはじめ社会保障制度の再構築を図るための解決策を提言するものでもない。21世紀の高齢社会を展望し、我が国の社会保障はどうあるべきか、公平で効率的な財源調達はどうあるべきか、といった基本的な議論が十分行われたとは言いがたい。

2.「保険料」か「税」かではなく、「国民皆年金」か否かが問題

問題の根幹は、基礎年金や老人医療といった国民共通の基礎的な保障をどうするかということであり、「保険料」か「税」か、といった短絡的な議論ではない。
最大の問題は、基礎年金の哲学である。「国民皆年金」を目指すのか、否か。米国、英国、フランス等、社会保険を中心とした国においては、低所得者等社会保険に加入できない人がいることはやむを得ないと考えられており、「国民皆年金」となっていない。それは、保険料という会費を払わない者には給付しない(貧困者には生活保護で対応する)ということを基本的な哲学としているからである。他方、北欧諸国、カナダ、ニュージーランド等の国においては、「国民皆年金」、すなわちユニバーサル・ペンションの仕組みをつくり、国民誰でも老後の基礎的な生活は保障すべきと考えており、その財源は一般に税となっている。それは、「国民皆年金」を目指す限り、最も公平で効率的(合理的)な財源調達の方法だからである。

3.21世紀の社会保障の在り方について、国民的な議論を行い、国庫負担の引き上げが検討される2004年までに結論を

「国民皆年金」を目指すべきか否かは、善し悪しの問題ではなく、国民の選択の問題である。諸外国の例を見ても明かなように、社会保険方式により「国民皆年金」を実現することは不可能と考えてよい。現在の国民年金は制度の趣旨があいまいであり、未納者の増大等深刻な矛盾を抱えている。本年3月に成立した年金改革法では、平成16年までに、基礎年金の国庫負担を1/2に引き上げる旨の附則が設けられたが、それでは問題はなんら解決しない。
そこで、構想日本は、基礎年金の在り方について、21世紀の高齢社会を展望した国民的な議論を始めることを提言する。自己責任を重視するのか、社会的な連帯を重視するのか。国民の最後の拠り所となるセイフティー・ネットは、今のように穴だらけのままで良いのか、それとも国民誰でも安心できる強いものにすべきか。こうした基本的な論点についての議論なしには、国民に対して負担を求めることはできない。また、これは税制や財政の在り方にもかかわるテーマである。これらの議論の材料として、次に述べる「新基礎年金制度」の創設を提案する。


〔具体的な提言〕 

1.真のセーフティネットとしての「新基礎年金制度」の創設

現行の基礎年金制度は、国民皆年金を目指し、世代間扶養の賦課方式によるもの(国民共通の年金を支給するため社会全体で費用を負担する仕組み)として創設されたが、拠出に見合う給付という保険原理が混在しているため、未納者の増大、第3号被保険者(サラリーマンが扶養する配偶者)の問題、サラリーマンが支払った保険料(厚生年金)からの財源移転等多くの矛盾を抱えている。
そこで、1階部分は、国民誰をも保障するセイフティーネットたりうる普遍的な制度として「新基礎年金制度」を創設する。その上で厚生年金や共済年金は2階部分として存続させ、社会保険のメリットを活かせる仕組みとする。

2.財源は租税(賦課方式) 

「新基礎年金制度」は、居住要件(例えば、20歳から10年間居住で支給、40年間居住で満額年金)だけで普遍的に年金を支給し、その財源は租税とする。税目は、所得税には所得の把握に困難が残ること、現役世代も退職世代も広く負担することが望ましいこと、経済に対する中立性等を勘案すると、基本的には、消費税を主な財源とするのがより適切か。ただし、財源の問題は、単に社会保障の領域の問題ではなく、目的税とすべきかどうかなどを含め、税制全体の在り方や財政再建のビジョンを議論する中で、取り扱うべき事柄である。
「国民皆年金」を前提とする限り、社会保険方式であろうが、税法式であろうが、負担すべき総額(基礎年金の額×高齢者の数)は同じであり、問題は、これをどのように負担すべきかということである。能力(所得又は消費)に応じた負担か、所得の多寡にかかわらず同一の負担とするか、どちらが公平かという問題である。

3.給付水準の在り方 

給付額は、当面は、現行の基礎年金の満額を前提とするが、最終的には、今後の高齢化を踏まえ、給付と負担のバランスの観点から見直すこととする。 基本的な考え方は、高齢期における生活費の基礎的な部分を保障するというものであり、生活保護が想定する保障額(>基礎年金額)ではない。これは、老後の生活保障は、基礎年金だけで対応すべきものではなく、2階部分や自助努力等によっても支えるべきものであるからである。 

4.現行制度からの円滑な移行(経過措置) 

現行制度において保険料を正しく納めてきた被保険者と未納期間のある被保険者に、「新基礎年金制度」により同額の給付を行うことは不公平であることから、未納期間のある被保険者には、本来給付すべき年金額から未納期間相当分を削減する等、一定の経過措置を行う。 

5.効率的な徴収システム 

効率性の観点から、社会保険庁の徴収部門の定員は、国税庁に移管する。 

現行の年金制度等の問題点(図1参照)、社会保険方式や税方式の議論の詳細については、以下の別添資料を参照していただきたい。

《参考資料》



年金制度一覧へ戻る