• 構想日本の活動

国会/内閣


1996/01/01(月)
国会機能の強化について

国会議員が政治の大枠を決めていない現在の日本で国の政策の大枠を決めているのやはり官僚だろう。本来、その任を担うべき国会議員の多くは、自分の選挙区に対する個別のこまごまとしたサービスにかまけて、日本の将来ビジョンを描く、国際関係の舵取りをする、といった国の太宗に係わる問題に正面から取り組んでいない。官僚はもともと、国会議員が示した大枠のなかで細目を決めて実行に移すのを本分とするが、政治家がその役割を果たさないため、代役を務めさせられているうちに今やそれが本文と考えるに至っている。

本来の姿に戻すためには、国の進路を決める審議の場としての国会の機能回復が欠かせない。国会の機能強化のためには何をなすべきか。構想日本の提案を以下に述べる。



1.議論を裏舞台から表舞台へ 

日本の国会とくに本会議での審議日数は国際的にみてもかなり少なく、審議の中身も「国対政治」が幅をきかせ、実りある審議が少ない。その最大の原因は、国会という表舞台ではなく裏舞台で議論が終わってしまっていることである。裏舞台では、主として与党の各部会を中心に官僚と議員どうし更には党間での激しい議論が行われている。ここでは党利党略もうずまくが、本来議論すべき事がらも議論されている。そこで実質的な決着がついてしまうので、国会は形ばかりのやり取りと居眠りの世界になる。

政策決定に先駆けて行われているこのような事前調整は、欧米ではみられない日本的な慣行である。審議の場を表舞台にもってくることなしには、国会機能の回復は実現できない。 

2.政府委員答弁の廃止を 

本来国会における答弁は大臣が行うべきものだが、現実には主として政府委員(国会に呼ばれた官僚)が行っている。本来、国会審議を通じて、答える大臣も質問する議員側もトレーニングが行われ、トレーニングのなかで政治家としての資質が明らかにされて、評価が定まっていく。しかし、政府委員がいると大臣は楽をすることができる。また、資質が不十分でも当選回数を重ねると大臣になることができる。大臣がすべて答弁するようになれば、大臣とはしんどいもので、誰でもなりたいと思わなくなるかもしれない。また、総理も資質のない議員を大臣にするわけにはいかなくなる。一方、官僚も政府委員答弁によって国会での議論の主導権を握っている。何しろ、答弁をすべて官僚が作るのだから。だからこそ国会機能強化に政府委員答弁の廃止は欠かせない。

また、官僚が国会議員に対して根回しをしたり、逆に議員が官僚を呼んで説明させるのも本来の議院内閣制のあり方からするとやめるべきである。いずれも官僚から主導権を握る要因となっている。なお、イギリスでは、役人が閣僚以外の国会議員と接するのは、慣例で禁じられている。

国会審議が増えると、官庁は答弁用の資料作成に追われてたまらない、という議論がある。この議論は「国家の無謬性」原則に根ざしている。国会答弁には間違いがあってはならない、一度行われた答弁内容は変えられない、という考え方にこだわると、薬害エイズ事件のようなことも起きる。国会答弁は本来、与党と野党の議論そのものであり、答弁内容に間違いがあれば政治家の責任である。官僚に責任を取らせるのは筋違いである。また、細かい数字の間違いなどで鬼の首を取ったように言うのはやめるべきだ。 

3.議員のパワーアップ 

以上のことを実行すれば、議員のパワーアップにつながる。どのような職業であれ仕事をきちんとしなければ力はつかない。国会議員にも本来の仕事をきっちりしてもらうことが全ての制度改革に先立ち基本となる。そして、パワーをつけたうえで、国会議員は握手だけの「ドブ板」ではなく「政策ドブ板」を展開し、われわれはその実施状況を評価して国会議員の格付けを行う。それが健全な選挙のあり方にもつながっていく。

議員の集まりである政党の強化策としては、政策シンクタンクと連携することを奨める。政策シンクタンクは、政党の政策調査研究をサポートするほか、内閣を担った時にはポリティカル・アポインティとなる人材の供給源ともなり得る。また、政党助成金の一部を使途限定し、政策立案のための調査予算とすることを義務づけるようにすることも考えられる。

更に、イギリスのように議員の選挙区を選挙毎に変えていくようにすべきだ。そうなると選挙区に対する個別サービスは殆ど行われなくなるだろう。代わりに「政策ドブ板」選挙が行われ、選挙民も政党も議員に対する評価基準が、政策が中心となってくる。 

4.国会の各委員会を強化する 

国会の委員会機能を強化することも重要である。商工、郵政、農林委員会などの各委員会は、それぞれに専任スタッフを抱えているが、このスタッフを大幅増員して各委員会の機能を拡充することが考えられる。

国会委員会のスタッフの増員は、各省庁で取りまとめ役をしている官僚や民間の人材をポリティカル・アポインティーで登用することによって行うのも一案である。また、各省庁には「政策担当局」というのがある。ここの人員と予算を折半して、半分を国会の委員会に割くようにすることも考えられる。政策形成に関する競争が、複数の機関の間で行われれば、論議も活発化し、国民の選択肢も増えることになる。

5.議会機能にも競争原理の導入を 

いうまでもなく国会は間接民主主義における、代議制システムである。このシステムに代わるものは今のところ見あたらないが、一方で、国会のみならず地方議会においてもその機能が弱くなっている兆候は多い。投票率の低下もその一つと言えよう。しかし住民投票のようにイエス、ノーを問うだけでは必ずしも民意の反映にはならない。むしろ情報化時代の特色をいかして間接民主主義の補完、国会機能の強化ができると考えている。現在、インターネットなどを通じて様々なフォーラムが存在しているが、政策に関するフォーラムを作っていけば、国、地方それぞれのレベルで民意を反映させ、また、特定の政策テーマについて議論をすることが可能になる。これが盛んになると議会の協力なライバルとなり、議員もうかうかとしておれなくなる。議会制民主主義への競争原理の導入である。

構想日本は政府の機能に対して競争原理を働かせるべく政策立案や民間版審議会などを進めていく予定であるが、これはその延長線上にあると考えている。 



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