• 構想日本の活動

国会/内閣


1999/08/30(月)
「世にも不思議な国会のしきたり」

「唯一の立法機関であり国権の最高機関」とされる国会での審議の形骸化が叫ばれて久しい。「構想日本」は多くの国会議員と議論を行いながら、政府委員廃止、副大臣制導入をはじめとする国会機能の強化をかねてから訴えてきた。その効果もあり、内閣を強化し、国会を政治家同士の討論の場にするため、副大臣制の導入と政府委員制度の廃止が実現する運びとなった。この機会に、国会での議論を活性化させ国会を「政治」を行う場に再構築するための改革を同時に行っていくことが重要である。 

経済、外交、教育、どれをとっても日本は正念場だ。国会議員が議論を行い、それを国民の中に広げ、十分に議論した上で民主主義の手続きに従って政策決定をしていく仕組み作りが緊急課題である。そのためには、主役である国会議員が国会改革を進めていくのは言うまでもないが、国民が現在の国会の問題点を正しく理解し、国民の側からも、大いに声をあげていく必要がある。 

その一助として、「世にも不思議な国会のしきたり」を作成しました。国会理解のご参考になれば幸いです。



世にも不思議な国会のしきたり


国委員会への閣僚の出席義務について

生徒:国会のテレビ中継を見たのですが、先生、どうして大臣なのに予算委員会で寝ている人がいるんですか? 僕たち授業中寝ていると、叱られますけど……
先生:予算委員会には討論には加わらない大臣もみんな出席しているからね。
生徒:どうして、関係がないのに、出席したりするんですか?
先生:予算委員会には、全閣僚の出席が義務付けられているからしかたがないんだよ。
生徒:どうして、そんな無駄なしくみになっているんですか?
先生:予算はすべてのことに関わりがあるというのが表向きの理由だけれども、本当は、大臣を予算委員会にくぎ付けにして、他の委員会が開けないようにするねらいがある。
生徒:大臣がいなければ他の委員会は開けないんですか?
先生:法律や先例(注1)ではどの委員会においても求められた場合にだけ出席すればよいとなっている。でも、通常はどの委員会も担当の大臣がいないと開かないし、予算委員会は全員出席しないと開かないんだ。
生徒:どうして、他の委員会が開けないようなことをするんですか?
先生:いい質問だ。そこが問題なんだ。国会を開く期間は決まっているから、与野党間で限られた時間の使い方についていろいろなかけひきをする。簡単に言えば、与党が通したい法案の審議時間を減らすと野党に有利になるからだ。こんなおかしな慣習はやめるべき。大臣は忙しいと言われているけれど、ただすわっている時間が長いなんて、時間の無駄だよ。国会議員は議論するために選ばれているのだから、その議論する時間を減らすために、かけひきをするのはおかしい。
 それに、委員会に出席するために、国際会議に出られないことも多いんだ。例えば、毎年ダボスで開かれる世界的な経済会議に今年は日本の閣僚は一人も参加しなかった。これでは、世界第二の経済大国なのに、その責任を果たしていないと言われても仕方ないよね。


基本問題検討委員会」(仮称)設置の必要性

生徒:ところで、どうして予算委員会では、予算とは直接関わりのないことをたくさん審議するのですか?
先生:国政全般について討議する委員会がないし、たいていのことが予算を伴うため、予算委員会ではほとんど何でも取り上げていいことになっているんだよ。だから、例えば、3月の参院予算委員会では、その時法相だった中村正三郎氏に対し、俳優のアーノルド・シュワルツェネッガーさんが特別許可で入国した際に書いたサイン入り関係書類を私蔵していた疑いが指摘され、それがもとで辞任したんだ。
生徒:予算そのものについては、いつ審議しているんですか?
先生:衆参全部あわせて一週間あるかないかだよ。
生徒:予算の審議はそんなに簡単にできるものなんですか?
先生:本当はできるものではないだろうね。欧米では、予算の項目について一つ一つ時間をかけて議論している。審議時間を1995年でみると、アメリカでは下院の財政委員会で392時間なのに、日本の衆議院予算委員会では105時間だし、本会議の審議時間は、アメリカ下院では1401時間、イギリス下院では1315時間だが、日本の衆議院では、55時間しかない。委員会主義だから本会議の時間が少ないという面はあるにしても、委員会の時間が少なすぎる。日本の政治は国会の外で行われることが多すぎる。与党審査や「国対」政治がまかり通っているからだ。


「国対」政治の弊害 

生徒:「国対」政治って何ですか?
先生:どの法案を、いつ審議するかは議院運営委員会という正規の常任委員会で決めることになっているが、実際には、実質的な協議は理事会で決着される。また、小会派の参加を排除するために、理事懇談会の形式で協議を行うことも少なくない。さらに、各党の国会対策委員会(国対)間の協議で国会の議事運営が事実上決定されることが多い。これが「国対」政治だ。「国対」政治の問題は、議院外の密室での取引によって交渉が行われていることだ。また、「国対」政治では法案を通すか、通さないかということばかりが重要で、法案の中味の議論がおざなりになってしまっている。


議員立法の推進 

生徒:右の表を見ると、政府提出法案が多く、議員提出法案が少ないですが、それはなぜですか。
先生:それは、一つには、法案の提出要件があり、衆議院において20人以上、参議院では10人以上の議員の賛成が必要だからだ。さらに予算を必要とする法案の場合、地元選挙区への「お土産立法」の濫発を防ぐため、それぞれ50人以上、20人以上が賛成が必要だ。それに対して、イギリスやフランスでは議員は単独で法案を提出できるので、議員提出法案の方が多い。でも、イギリスやフランスも議員内閣制だから、成立法案では政府提出のものの占める割合が高い。
 もう一つ議員提出法案が少ない理由は、政府の法案の作成は、膨大な情報・人を有する霞ヶ関省庁がフル稼動するが、国会議員の法案作成をサポートする両院の法制局の職員定数は72人と少ないなど能力にも限界があることだ。また、議員が法案を作成するという役割を認識していないことも一因だろうね。それに、法案を作成したとしても、党内調整や省庁との利害対立で未提出になる法律も多いし、法案が提出できたとしても、委員会に付託されないこともあるんだ。いわゆる「吊るし」だよ。そして、会期末まで「吊るし」て、廃案に追い込んでしまうこともあるんだよ。


法案提出を待たずに行う審議の必要性 

生徒:そういえば、国会では、法案がないと審議しないんですか?
先生:そうなんだ。法律上の根拠はないんだが、慣例として、何かの法案について政府を呼んで質疑するスタイルで審議しているんだ。それに休会中は委員会を開かないことを先例としている。だから、例えば、95年9月の沖縄での米兵による女児暴行事件では、安保防衛問題を担当する安全保障委員会ですぐにその問題を審議すべきだったのに、やっとそれが実現されたのは、1ヶ月半後の「国際機関等に派遣される防衛庁職員の処遇等に関する法律案」の審議においてだったんだ。
生徒:オウム問題など国の緊急な対応が必要な場合はすぐに委員会を開いて、議論してもらいたいですね。
先生:そうだね。それに法案になってから審議すると、法律体系が複雑なので条文の修正は難しいから、要綱段階で審議した方がいいと思う。


逆質問権(反論権)と自由討論時間 

生徒:ところで、どうして、議員の「質問」に政府が「答弁」するというスタイルで審議を進めるのですか?私たちが議論する時には、もっと自由にやりますけど……
先生:議員の発言を制限するような法律は見当たらないのだが、議院法や議院規則は、政府が提案して、議員が提案者である政府に質疑する、お伺いするというスタイルを前提にしているんだ。だから、政府側は「反論権」「逆質問権」を持っていないんだ。それに、法案の審議をしている時に反論されても、質問している方は対応のしようがないだろうね。「反論権」「逆質問権」を認めるには、相互に異なる案を提出している場合にのみ認めるといったルールが必要になるだろうね。
生徒:自由に討論できる時間は作れないんですか?
先生:現在、自由に討論できる時間は設けられていない。でも、衆議院・参議院規則に「委員は、議題について、自由に質疑し、意見を述べることができる」という規定があるから本当はできるはずなんだ。
生徒:今までに、自由に討論したことはあるんですか?
先生:1947年の国会法制定時には、二週間に一度自由討議を設けるとの規定があったが、1955年に廃止されてしまった。それは、国会では関連質疑が幅広く認められているので政府に対する質問の機会としてとくに自由討議の時間を設定する必要がなかったこと、議員自身も自由討議に慣れていなかったこと、テーマ設定が難しかったことなどから、活用する議員が少なかったからだ。
生徒:今は、介護保険問題、安保問題、金融問題、年金問題などテーマもたくさんあるし、活用したい議員さんも多いでしょうね。それがテレビ中継されれば、私たちも、どの議員がどんな議論をするかよくわかるようになりますね。


野党法案の並行審査 

先生:それから、与野党間の議論を活発にするには、野党の対案との並行審査もやるべきだ。
生徒:並行審査って何ですか?
先生:同じテーマについて内閣提出案に対して野党の対案が提出された場合に、両方同時に審査することだよ。委員長の裁量でできるから、政治改革法案など並行審査することが増える傾向にはあるが、時間短縮や面倒なことを避けるために、並行審査をやらないことが多いんだ。


政府委員の廃止 

生徒:国会が議論の場になっていないことについて、もう一つ質問があります。どうして、大臣は官僚の作った原稿の棒読みしかしないんですか?
先生:簡単に言えば、失言をしないようにするためだね。行政の一貫性を保つため、一度行われた大臣の答弁内容は変えてはならないという慣例があるんだ。その結果、大臣も役人たちも過剰防衛になって、棒読みしかできなくなるんだよ。本当のことを言えば、勉強不足の大臣が多いことも問題だけどね。
生徒:どうして、答弁の原稿が用意できるんですか?
先生:役人が前日、議員のところに「質問取り」に行き、深夜に答弁を書き、課長や局長がOKしたものを、当日の朝、大臣に説明しているんだ。役人にとっては、時間がかかり、非常に大変なんだ。その時間をすべて他の仕事に回せばすごく効率よくなると思うね。役人たちも人並みの生活ができるだろうしね。
生徒:原稿以外の細かな質問をされたら、どうするんですか?
先生:これまでは政府委員が説明していたんだ。
生徒:政府委員って?
先生:国会の審議において説明や答弁をする役人だよ。両議院の議長の承認を得て内閣が任命するんだ。各省庁の局長がなることが多かった。少ない時でも240名前後、多い時では340名前後もいたんだ。政府委員はあくまでも補佐の立場だから単独の責任で発言することはできないけどね。
生徒:どうして、大臣が答えなかったんですか?
先生:大臣は当選回数順になることが多いから、必ずしもその分野の得意な人がなっているわけではないからね。
生徒:どこの国でもそうなんですか?
先生:そんなことはないよ。イギリス議会は、日本と同じ議院内閣制だが、議員同士の議論の場だから、政府委員制度などないし、大臣といえどもその議院に議席がない限り出席・発言することはできない。フランスやドイツには政府委員制度があるが、フランスではあまり活用されていないし、ドイツでは委員会レベルで実質的な法案修正を実施するために政府委員も参加しているんだ。
 次の国会から政府委員制度が廃止され、副大臣制度が導入されることになるが、これは、国会改革の第一歩だ。


質問の事前通告制 

先生:大臣が棒読みせずに、答弁するためには、質問を例えば三日前までに通告するようにしたらいい。ただ、現状では理事懇談会が開催されるのが委員会の一、二日前で、その時に質疑の順序や時間が協議されるので、三日前に通告するのは無理だから、まず、それを変えないといけない。
 それに、大臣が自分の得意な分野を持って、討論ができるように、一番ふさわしい人が長く大臣を続けるべきだね。現に、他の国の大臣は2~5年在任しているよ。日本は毎年定期人事異動のように交替するから、最近の大臣の在任期間は1年未満。圧倒的に世界最短だろう。
生徒:なぜそんなに変わるんですか。
先生:「大臣」と呼ばれたい人が多いからだよ。「大臣」のポストが当選回数順の配分ポストとされてしまっているんだ。


質問時間の設定の見直し 

生徒:それから、もう一つ質疑について疑問があるのですが……
 質問をしていた野党議員が「残り時間が少ないので、次の質問に移ります。」と言って、途中で質問を打ち切っちゃたんですよ。 どうしてですか?もっと、追求してもらいたかったのに…… 先生:質問時間が決められているからだ。しかも、衆議院では質問時間には答弁の時間も含まれているんだ。
生徒:それじゃ、政府側がのんべんだらりと、くどくど説明して、質問の時間を少なくすることができちゃうんじゃないですか?
先生:そうなんだよ。答弁の時間を含めないようにした方がいい。


国会資料収集権の創設 

生徒:それに時間の点を除いても、政府に対する議員の追求が甘く感じられるのですけど……
先生:それは、十分な情報が得られないまま質問するからだよ。国会には、国政調査権と言って、国政に関する調査を行い、証人の出頭、証言、記録の提出を要求する権利が憲法で認められている。でも、国政調査権は個々の議員に付与された権限ではなく、議院または委員会の意思にもとづいて実施するものなので、多数派の賛成を得ることが必要なんだ。それに、国会の慣行では、証人尋問の決定は各委員会の理事会に委ねられており、理事会の意思決定は全会一致を原則としている。
生徒:それでは、利用するのが難しいですね。
先生:それだけじゃない。政府からの資料の提出期限を設けていないため、確実かつ迅速に資料が提出される保証がないんだ。国会での審議をより活性化していくには、報告・記録の提出期限を設けることが必要だろうね。それに国政調査権の補助的機能としてもっと要件が緩やかな資料収集権を積極的に認めることも重要だろうね。もっとも、どんな問題でも国会議員自身がよく勉強することが前提だ。いくら制度を充実しても、実行しなければね。みんなも同じだぞ。


国会学級崩壊説!? 

生徒:ところで委員会は何時から何時まで開かれるんですか?
先生:日によって違うけど、9時からお昼をはさんで6時ぐらいかな。大臣は、一日8時間ぐらい、すわっていなければならないんだ。
 でも、議論を活発にして、委員会の開催日数や審議時間は長くした方がいいとすると、大臣の出席義務はやめないとね。
生徒:この間、テレビで本会議を見ましたけど、本会議では、出歩いている人がいたり、こそこそ話している人がいたり、学級崩壊みたいでしたよ。学級崩壊は生徒だけが起こしているんではないんですね。座っているとつらいところでは必ず起きるんですね。
 「国会歌舞伎座説」というのも聞いたことがありますよ。歌舞伎座には失礼かもしれないけど……どちらも、血筋と年功ですって……
先生:国会の不思議についての話はまだまだ尽きないが、今日のところはこれで終わりにしておこう。 



(注1)
国会法、衆議院規則、参議院規則等の国会関係法規の他に、「衆議院先例集」「参議院先例集」「衆議院委員会先例集」「参議院委員会先例集」がある。いずれも500以上の項目が収載されている。これらの先例は、同じような事に対してとられた処理例であり、規範的に機能しているものが多数ある。 

●関連条文、語句説明等
<国会法71条>
委員会は、議長を経由して国務大臣及び政府委員の出席を求めることができる。 

国会会期=247日
(1986年~1995年の平均)

<審議日数の比較>(1995)
アメリカ下院 154日
日本衆議院 53日
アメリカ下院財政委98日
日本衆院予算委 38日 

<与党審査>
内閣提出法案の閣議決定前に与党会派によって行われる法案審査。そこでは議員と省庁との間で、あるいは利害の対立する議員同士で激しい議論になることもある。

<常任委員会>
常設の機関として国会法にその数及び名称が定められている。現在、予算委員会、地方行政委員会など衆議院には20、参議院には17ある。 
<理事会>
委員会の議事運営に関する決定を行う。主な会派に配分しているので小会派は理事に加われないが、オブザーバーとして出席が認められている。 

<理事懇談会>
与党の理事だけなど一部の理事の会合。正式な機関ではない。 

<日本の最近10年間(1986~1995年)の立法状況>

<議案の付託>
議長が議案を委員会の審査に任せること。議案は、特に緊急を要するものとして発議者又は提出者の委員会審査省略の要求がない限り、委員会に付託し、その審査を経てから本会議で議決することが原則となっている。(国会法56条2項)

<衆議院委員会先例36号>
休会中には、委員会を開かないのを例とする。
ただし、第三会国会(昭和23年)において国会の休会中に議院運営委員会と不当財産取引調査特別委員会が開かれたことがある。 

<衆議院委員会先例79号、参議院委員会先例54号>
数個の議案が同趣旨であるとき又は関連するときは、一括して議題とし、これを審査する。

<憲法62条>
両議院は、各々国政にい関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。
<国会法第104条> 各議院又は各議院の委員会から審査又は調査のため、内閣、官公署その他に対し、必要な報告又は記録の提出を求めたときは、その求めに応じなければならない。



お問合せ先: 構想日本
102‐0093東京都千代田区平河町2‐11‐2渡辺ビル3F
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